スタウトビールっぽいがアルコール度数は低く、キレの良い喉越しでいくらでも飲める!
話もそこそこに、さっそくビールをいただくことにした。店内は土産品店を思わせるつくりだが、『カフェ&ワインバー』という名前に偽りはなく、スタンドスタイルで喫茶もできる。
慎重な手つきで丁寧に注がれた中ジョッキの『桔梗信玄 Kuromitsu Black 生ビール』は、特に変わったこともない黒ビールにみえる。近頃のスリムな中ジョッキではなく、中身の量が確保された、言葉のイメージ通りの中ジョッキだ。黒色が強いのか、泡の茶色が濃い。それ以外は、いたって普通の黒ビールだ。
顔を近づけると、焙煎香が薫るが強くない。ジョッキに口をつけ、ぐっとあおると、するすると喉まで走った。喉越しは爽やか。コクが深いが苦みは少ない。舌の上には酸味がのこり、鼻には香ばしさが抜ける。スタウトビールのような印象だが、拍子抜けするほど軽くてクセがない。
アルコール度数は3.5%。これはいくらでも飲めるな、と思いながら、普通の黒ビールとして評価している自分に気がついた。きな粉だの黒糖だのと身構える必要がない。強いて言えば焙煎香が独特だが、それも言われなければ、銘柄の個性のうちで収まる範囲だ。
飲む前から飲み終えた後まで、キワモノじみた印象はまったく感じられない。製造元は『Far Yeast Brewing Company』。どこかで聞いたことがある気がすると思って調べると、高級クラフトビール『馨和(KAGUA)』のメーカー。美味いのも道理なのだった。
『夜の桔梗信玄餅』を使った『桔梗信玄ミルク』も美味い!
礼を言いながらジョッキを返すと、店長が「こういうものもありますよ」と教えてくれたのが『桔梗信玄ミルク』(税込600円)だ。『夜の桔梗信玄餅』をミルクで割ったカクテルなのだという。
『夜の桔梗信玄餅』(税込2420円)は、別名『桔梗信玄黒蜜きな粉リキュール』。こちらも、桔梗信玄餅に用いられるきな粉と黒糖を使ってリキュールに仕立てたものだ。製造はモンデ酒造。山梨のワイナリーとして名の通ったメーカーだ。
このリキュールをジョッキの底に敷き、その上にたっぷりのミルクを充填して、ユーザー自身がマドラーで撹拌して愉しむのが『桔梗信玄ミルク』というわけだ。
『桔梗信玄 Kuromitsu Black 生ビール』と同じ中ジョッキに氷を入れて、リキュールとミルクが規定通りの配分で満たされている。あまり混ぜずに変化を愉しむのも一興かもしれないが、味を評価するにはムラがないほうがいい。冷えた中身を、よく混ぜてから口にする。
ひとくち煽ると、こちらはビールと違って「きな粉と黒蜜」というイメージどおりの味。ねっとりと舌にまとわりつくような甘みと、コテコテのコクが口の中を支配する。飲み物でありながらスイーツのようだ。カルーアミルクよりもなお甘く、ねっとりとした風味が後を引く。喉で味わうよりも、ちびちびと舐めるように舌の上で転がして、長く続く余韻を愉しむのが相応しい。
これはこれで非常に美味で、酒の苦手な人にも親しみやすい仕上がりだ。