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めでたい吉祥の生き物

「益獣」と「害獣」のどっち?

今回の『漫画・満吉くん』の中で、主人公の満吉くんは、コウモリに対して、こんな問いかけをしています。

コウモリは、蚊などの虫を大量に捕食するほか、蝙蝠(こうもり)の「蝠」が「福」と中国では発音が同じ「Fu」のため、吉祥(よい兆し)の生き物とされてきた経緯などがあります。江戸期に、コウモリの文様が描かれた陶磁器が散見されるのも、中国製の影響を受けたためとみられます。

呼び名については、「蚊をよく捕食するところから、蚊屠(かほふ)りと呼ばれたのが語源」(デジタル大辞泉)らしく、「かわほり」が時代を経て、変化してきたものと思われます。縁起を担いで「幸盛り」の字を当てることもあります。

コウモリは、哺乳類で唯一、飛ぶことがきでます。

一方で、家屋などに入り込み、糞をするなどの被害が報告されています。しかし、鳥獣保護管理法で保護されているため、捕獲が禁止されています。このため、勝手に駆除ができず、行政の許可が必要となります。

岡本かの子の短編「蝙蝠」

大正・昭和期に活躍した小説家で歌人の岡本かの子(1889~1939年)が書いた作品に「蝙蝠」という短編があります。

舞台は「町々に井戸のある時分」(作中より)の東京。11歳の少女、お涌(よう)は日没後のまだ青みが残る黄昏時に、コウモリが飛んでいるのを見ます。子供たちの一人に竿で打ち落とされたコウモリをもらったお涌は、旧家の12歳の少年、皆三の「欲しい」という求めに応じて…。

黒くて見た目が奇怪なこの小動物を、お涌は何故か「いぢらしいもの」に感じます。コウモリは、お涌と皆三を結び付け、2人を幸せな未来へと導きます。2人にとって、コウモリはまさに「吉祥」の存在として描かれていました。

ちなみに、かの子と、漫画家の岡本一平(1886~1948年)の間に生まれたのが芸術家の岡本太郎(1911~96年)です。1970(昭和45)年の大阪万博の際に作られた「太陽の塔」をデザインした人物としても知られています。

江戸家猫ハッピー(Edoya Nekohappy)

マルチクリエイター。動物ものまね芸人「三代目 江戸家猫八」の末娘。
1993年から15年間、俳優・緒形拳に師事。共著「地球徒歩トボ」(学研)では写真を担当した。オリジナルキャラクターである猫の「満吉くん」を通して、地球を楽しむための写真・漫画・グッズなどを発信している。伊豆高原で「猫満福庵」という猫のいるギャラリーをオープン予定。

・「猫満福庵」https://nekomanpukuan.com/

・「江戸家猫ハッピー」https://nekohappy.com/

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おとなの週末Web編集部 堀
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