季節を問わず人気の観光地・京都で定番土産と言えば、三角に折った形が印象的なお菓子・生八つ橋。特徴のひとつである三角の形にして「おたべ」の商品名で1966(昭和41)年に売り出したのが『美十(びじゅう)』(当時は『さか井屋』)だ。京都銘菓の原点ともいえる商品のラインナップに、着想から商品化まで12年かかったという新商品が登場した。その開発ストーリーと新商品の魅力に迫る。
人気京都土産・生八つ橋が三角形の理由
修学旅行や定番の旅行先として人気の京都は、神社仏閣など日本らしさを感じられる観光名所が随所にある。国内外から観光客が押し寄せ、お土産を買って帰る人は多い。
そんな京都の定番土産の一つである生八つ橋は、短冊形のせんべい「八ツ橋」の生地を焼かずに蒸した和菓子だ。四角い生地を二つ折りにして、間に粒餡などの餡を挟むものもある。定番のニッキ風味のほか、生地に抹茶やゴマを練り込んだもの、餡の代わりにチョコレートを挟むものなど、さまざまな商品がある。
多くのメーカーが売り出し、味わいの種類も豊富な生八つ橋は、三角の形状を想像する人が多いのではないだろうか。この形で初めて売り出されたのが、多くの観光みやげを手掛ける『美十』が販売している「おたべ」だ。
発売当初の1966年は、高度成長期で旅行需要が拡大しており、大量生産が課題となった。そんな中、当時の経営者・酒井清三さんの長男・英一さんが「和菓子職人ではなく、パートさんでも簡単に作れるように」と、生八つ橋を三角に折りたたんだだけの形を思い付いたのが始まりだった。