日の出・芝浦線の廃線跡をたどる
廃線からすでに40年が経過した日の出・芝浦線であるが、その廃線跡(線路敷)のほとんどは、廃線後に行われた沿線の再開発などによって失われているのが実情だ。そして、その廃線跡を上書きするように、新交通“ゆりかもめ”が走っている。もちろん「埠頭」の中にも、引き込み線や側線と呼ばれた線路が無数に敷かれていたが、その線路跡は”アスファルト舗装”で整地され、平成の時代には「地面の隙間」から顔をのぞかせているところもあった。しかし、時代とともに“港湾管理地”への立ち入りが厳しくなり、その後の再開発などによって姿を消しているなど、近年では確認することが難しい。
そのような状況のなか、いまでも踏切跡(レールと踏切路床板)が遺されている場所がある。“ゆりかもめ”の竹芝駅と汐留駅の間にある、海岸通り(都道316号/日本橋芝浦大森線)に沿った首都高速1号羽田線の真下となる中央分離帯の中に、その鉄道遺構はあった。残念ながら、この場所はフェンスで覆われており、また交通量の多い道路なだけに”容易に近づくこと”ができないのが実情だ。こうした場所だからこそ、今でも手つかずのまま遺されているのだろう。ここに”踏切があった”ということすら忘れ去られようとしている時代の「正に生き証人」というわけだ。
新交通”ゆりかもめ”に乗って、汐留駅→竹芝駅→日の出駅→芝浦ふ頭駅と”湾岸エリア”の景色を眺めながら、「東京港の繁栄を支えた貨物線」に思いをはせてみてはいかがだろうか。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。
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