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札幌の食通たちが推した評判店「けやき」

「すみれ」の卒業が決まったのち、私たちはあらためて札幌じゅうの老舗から新しい店まで実に20軒ほどのラーメンを食べ歩きました。1960年代から「味噌ラーメン」の名前が売れた札幌では、次第に観光化と量産化が進みました。そんななか、1990年代後半頃から起きた“一大ラーメンブーム”により、札幌でも味噌ラーメン以外のさまざまな味を提供する店が続々とオープンし始めました。

しかし、「うれしい反面、味噌ラーメンのお店が減っていくのはさびしい」「やっぱり味噌ラーメンが食べたい」――という声も聞こえていました。私たちは、郷土料理のようにその土地に根づいた食文化としての“ご当地ラーメン”に着目していました。それゆえ新しく迎える店は、味噌ラーメン生誕の地「札幌」だからこその味噌ラーメン専門店を誘致しよう、という結論に至りました。

そんななか、食に精通する札幌の方々が、「札幌に来て、もし時間があるのならここの味噌ラーメンを食べてほしい」と、以前から口をそろえて薦めてくださる店がありました。そのお店が「けやき」でした。

キャベツ、ニンジン、キクラゲの上に白髪ネギ……。テーマは「五感に訴える一品料理としてのラーメン」。それが札幌「けやき」の味噌ラーメン

私たちも2000年に初めて食べました。そのときのメモによると、「オープンしてまだ新しいお店。だが、新時代を象徴する味噌ラーメン専門店……」と書き残していました。

複雑な旨みとコクのあるスープ

味噌ラーメンの奥深さに魅せられて

「けやき」の誕生は1999年の11月。似鳥さんは、ホテルやレストランなどでの料理経験を経て、1983年に創作和食店「わびさび」を札幌に開業します。地元の人たちからも支持を受け、一躍人気店となります。けれど、似鳥さんはそんな繁盛店となった「わびさび」を手放して、「けやき」を始めたのでした。その理由にはどのような背景があったのでしょうか?

創業者である似鳥栄喜さん。創作和食店から味噌ラーメンの銘店になった

似鳥さんによると、「当時、観光で札幌に来るお客さまから立て続けに、味噌ラーメンのおいしい店を聞かれたのがきっかけです。それならば、自分が納得できる味噌ラーメンを作ってみようと……。しかし、いざ作ってみるとこれが非常に難しい。味はどんどん変化していくし、まったく安定しない」とのこと。

最初は店の〆めの料理として出そうか……くらいの気持ちだったそうですが、「その奥の深さに魅せられ、気づいたら2年もの時間を費やしてしまいました。その間、常連さんには迷惑されるほど試食をしていただきました。味噌ラーメンの聖地で味噌ラーメンを極めたいという思いが強くなり、“わびさび”まで手離してしまいました」と、当時を振り返っておられました。

小麦を炒ったような香ばしさと弾力のある麺
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その味は「もう一度確認してみたくなる味」
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おとなの週末Web編集部
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