エンジンは新開発
前述のとおりプラットフォームは3種類、そしてエンジンは新開発の直4エンジンを搭載。その新エンジンの排気量は1.3Lと1.5L。4連アルミシリンダー、クロスフロー12バルブで上級モデルにはPGM-FIが組み合わされ、燃費向上用ACGコントロールなどが装備された。トランスミッションには5MT(最廉価グレードは4MT)、3ATのほか最上級グレードには3速ATオーバードライブ付ホンダマチックも用意されていた。
ボンネットを低くするためにフロントサスに工夫が施されたほか、ホンダが新世代のFFを標榜するだけあって、サスペンションチューニングにもこだわりを見せ走りの気持ちよさも追求。
極めつけは、1984年に1.6L、直4DOHCの追加したこと。これによりシビックのスポーツイメージは最強レベルに高まった。DOHC搭載グレードはSiと呼ばれ、DOHCのカムカバーがボンネットに干渉しないようパワーバルジが設けられていた。ノーマルとのちょっとした差が大きなステイタスでもあった。
CMが秀逸!!
ホンダは自動車メーカーのなかでTV CMが秀逸なので有名。クルマを直接アピールするよりもイメージを優先していた感が強い。そしてそのTV CMに欠かせないのがBGMで、楽曲選びがホントにうまい。
1980年代のホンダのTV CMではプレリュードのボレロ(モーリス・ラヴェル)が有名だが、3代目シビックの『What a Wonderful World』(邦題:この素晴らしき世界)も人気が高い。この曲を聴くとワンダーシビックを思い出すという人は多いハズだ(逆もしかり)。筆者などは今でもそうだ。
草原にたたずむ赤いシビック3ドアハッチバック、画面はセピア色に処理され、郷愁を誘う。そしてジャズ界のレジェンド、サッチモことルイ・アームストロングのしゃがれた渋い歌声が流れ、「What a Wonderful World」の文字。派手さはないが、とても印象に残るCMで、YouTubeではそのCMを見ることができるのでぜひとも検索して懐かしんでほしい。
現代の技術で復刻を願う!!
コンパクトハッチバックの世界的名車と言えば、FFの開祖のBMC MINI、機能性と走りのバランスに優れ世界に衝撃を与えた初代VWゴルフというのは定番だが、ホンダらしさ全開で当時のFF潮流の一歩先を目指しそれを実現した3代目のワンダーシビックは、コンパクトハッチバックの老舗である欧州メーカーにも、デザイン、パッケージング、FFの走りなどすべての点で影響を与えていて、両車に勝とも劣らない存在と言ってもいいと思う。
何よりも効率よりも目標に向けて邁進するホンダらしさが全開なのも今となっては凄いことだし、微笑ましい。
ワンダーシビックのデザインを現在の技術でオマージュしたコンパクトハッチを登場させてほしいと思っているのは筆者だけではないはずだ。
【3代目シビック3ドアハッチバック25i(5MT)主要諸元】
全長:3810mm
全幅:1630mm
全高:1340mm
ホイールベース:2380mm
車両重量:815kg
エンジン:1488cc、直4SOHC
最高出力:100ps/5800rpm
最大トルク:13.2kgm/4000rpm
価格:118万9000円
【豆知識】
初代は2代目シビック、2代目は3代目シビックの姉妹車。2代目バラードのスポーツモデルとして初代CR-Xが登場した。シビックの4ドアセダンと主要コンポーネントを共用していたが、デザイン面ではシビックが固定ライトだったのに対してバラードはセミリトラクタブルヘッドライトが与えられ差別化されていた。コンパクトセダンでは、カローラ、サニーの牙城を切り崩すのは難しく、バラードは2代目を持って消滅。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/HONDA




















