二十四節気の「大雪(たいせつ)」(2025年は12月7日)を過ぎ、12月らしい寒さになってきました。この季節、ますます美味しくなるのが「おでん」です。いぜんご紹介した大阪の「関東煮(かんとだき)」を始めご当地おでんは全国各地にありますが、石川県にも「金沢おでん」というジャンルがあるのをご存じでしょうか。金沢というと寿司や海鮮料理のイメージで、「おでん」と言われてもピンとこないかもしれませんが、石川県は「人口ひとりあたりのおでん屋さんの軒数」は全国トップクラスのようです。ということで、北陸シリーズ最終回は冬にぴったり、「金沢おでん」で締めたいと思います。金沢市内の名店中の名店3軒のおでんで心も体もほっこりされてください。
金沢駅の“エキナカ”にある『黒百合』
1軒目は、“エキナカ”にあって「金沢おでん」を代表する名店『黒百合』にご案内します。名前だけ聞くと、繁華街の裏路地にひそむ一見さんお断りのバーやスナックが似合いそうな店名です。
どうりで黒百合の花言葉を調べると、「復讐」の意味や「愛」といった意味があるそうな。やはりゾクゾクする名前です(笑)。ところが『黒百合』はJR金沢駅の“エキナカ”という、これ以上ない繁華な立地にあります。
1953(昭和28)年に国鉄金沢駅地下ステーションデパートで創業しました。北陸新幹線開業に伴う駅舎改装により駅に隣接する「金沢百番街あんと」に移ったのが2014(平成26)年とのこと。おでんの名店かつ金沢を代表する居酒屋が“エキナカ”にあるとは我々旅行客にとっては嬉しいことです。
さて、金沢おでんを簡単にご説明します。まずは出汁。昆布や鰹節、煮干しなどでとった出汁をベースに地元の醤油を使用し、コクと旨味あふれる味わいが特長です。具も地元の名産品に拘ります。3軒をご紹介しながら説明してまいりましょう。
金沢おでん定番の「赤巻」と「車麩」
『黒百合』でいただいたのは、金沢おでん定番の「赤巻」と「車麩(くるまぶ)」。加えて「がんもどき」と「大根」の4品です。おでんのビジュアルってほんと食欲をそそりますね。
「赤巻」は赤いすり身の薄皮でかまぼこを巻き、蒸したものです。「車麩」は名前の通り、真ん中に穴が開いている丸い大きな麩です。同店の「車麩」は半分に切ってあるため全体の様子がわかりません。車麩が大きすぎるようです(笑)。「がんもどき」の中は、ぷりぷりの銀杏、小さいけど弾力のあるシイタケ。にんじん、キクラゲなど、具沢山。おでんの出汁とそれら具材がしっかり煮込まれて絶妙な美味しさです。
そして同店のもう一つの名物が「どて焼き」です。豚肉とコンニャクが串に刺され、白味噌で仕上げられています。これが抜群に旨い。「どて焼き」といえば大阪や名古屋のイメージですが、ここ金沢でも多くの酒場で愛されるメニューのようです。ちなみに、甲府や岡山にも「どて焼き」の名店があります。いつか「全国のどて焼き特集」をやりたいなぁ、と思っています。
同店は行列のできる人気店ですが、店頭にある順番待ちシステムで予約し、お土産を買いながら待てばあっという間に時間が過ぎると思います。金沢に着いてすぐもよし、金沢を発つ時もよし。旅行にぴったりの名店『黒百合』にどうぞお運びください。










