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フルコースがコンパクトに盛り込まれたワンプレートランチ

では、ご昼食はどのような料理なのだろうか。ご昼食は午前と午後の祝賀を受けられる間の、30分から40分ほどのごく短時間で召し上がる。

とにかく忙しい日なのだから、食事は簡単にすませるために10インチ(約25センチ)の皿に料理を盛り込むワンプレートランチである。このワンプレートランチは『天皇の料理番』で知られる秋山徳蔵が発案したものという。

ある年のワンプレートランチを見てみよう。魚と肉とともにスープライスが盛り付けられてある、コンパクトながらフルコースのメニューである。

【「スープライス」のワンプレートランチ】

コンソメスープ
魚/春子鯛酒蒸し(芝エビ、帆立貝)、ジャガイモ、揚げパセリ
肉/ローストビーフ、ブロッコリー、ニンジン、小玉ねぎ
ご飯/スープライス(銀杏、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルーム)
サラダ(トマト、レタス、パパイヤ)
パン

魚は鯛。鯛はおめでたい席には欠かせない食材である。春子鯛酒蒸しは、手のひらに収まるくらいの小さな春子鯛の中骨をすべて外して、芝エビと帆立貝のすり身を詰めてシャンパンで蒸したもの。ジャガイモと揚げパセリが付け合わされる。

肉は牛。ローストビーフにブロッコリーと人参と小玉ねぎが添えられている、

ご飯はスープライス。まず鶏肉のスープでご飯を炊く。銀杏、玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームを炒めてご飯に混ぜ合わせ、プリン型で抜いてかわいらしく据えられている。

小ぶりな皿に肉と魚とライスのフルコースが美しく盛られた、合理的なワンプレートである。コンソメスープはカップで、サラダとパンは別皿で出される。美しく楽しい、食べやすい一皿に話も弾むことだろう。

厨房を預かる大膳は、このワンプレート料理を少し多めに準備しておく。もし「春子鯛のお代わりを」とご希望される方がいたら、プレートごと差し替えるのだ。とにかく手早さが求められるのだから、スマートにやりたい。

国民はニュースで垣間見るのみの新年の天皇家のご様子。今年は愛子さまに加え、悠仁さまも行事に参加されることだろう。忙しい行事の合間だからこその体にやさしい料理は、私たちもお手本にしたい工夫である。(連載「天皇家の食卓」第47回)

昭和天皇(C)JMPA

※トップ画像は、昭和天皇(C)JMPA

参考文献:『昭和天皇のお食事』(渡辺誠著、文春文庫)、『宮中歳時記』(入江相政編、小学館文庫)、『宮中 季節のお料理』(宮内庁監修、扶桑社)

文/高木香織
たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

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