スイーツ業界のタブー「熟成」――なぜ怖いのか
「パティシエ業界では、熟成って結構タブーに近い存在なんです。敬遠されてきた理由は、単純に『怖い』から。
熟成肉なら、料理人が目の前で見て、匂いを嗅いで、触って、火を入れて出せる。
でもスイーツは、目に見えない状態のものをお客さんに送る。その後どう保存されるかも分からない。だからスイーツ業界では『当日食べましょう』が基本で、 熟成は避けられてきました。
そもそも『熟成』って、定義がないんです。1分置いても熟成という人もいるし、 醤油に漬けたら熟成という人もいる。熟成チーズを使っているから熟成チーズケーキ、という人もいる。
嘘ではないけど、曖昧です。だから僕らは、こう定義しました。
『タンパク質が酵素によって分解され、アミノ酸に変化すること』
そうすると、 『どれだけアミノ酸が増えたか』が一つの指標になる。
調べていくと、酵素は60度で失活し始め、70度で完全に失活すると言われています。つまり、普通に焼いてから熟成をかけても、その時点で酵素はもう死んでいる。
多くの人がやっているのは、
・熟成したチーズを使う
・焼いた後に24時間置く
でも、それは僕らの定義する熟成とは違う。
腐敗と熟成の間には『完熟』と呼ばれるゾーンがあって、そこは商品として扱うには一番怖い。
だから結論として、「焼く前に熟成するしかない」というところに行き着きました」
独自メソッド「二段熟成」――24時間という答え
「そこで生まれたのが、二段熟成です。
・まず、クリームチーズの段階で熟成
・次に、卵や生クリームを混ぜた生地の段階で24時間熟成
この2回の熟成で、通常5日置いたものと同等の変化が起きる。
48時間、72時間も試しましたが、甘さの角が取れすぎて、スイーツじゃなくなってしまいました。味と生産性、その両方を考えたときに、24時間が一番ちょうどよかったんです」
成分分析で確信――「これは本物だ」
「体感では明らかに熟成したものと、しないもので違う。でも、それを証明したかったんです。
そこで成分分析に出しました。その結果は、
・アミノ酸:1.8倍
・グルタミン酸:1.8倍
・粘度:8.4倍
・水分量:0.7倍
『やっぱり合ってた』。ここで、確信に変わりました」
遂に熟成バスクチーズケーキが出来上がり、田和さんは販売チャネルを模索し始めた。そこで挑戦したのが、クラウドファンディングだった。



