もしもTRY審査員の話が来たら?
TRY審査員の話があった時は、どう感じたのだろう。
「2019年版で大崎さんの卒業が発表されていたので、周囲のラーメン好きを見回した時に自分も可能性はゼロではないとは思っていました」
大崎裕史さん(現・ラーメンデータバンク取締役会長)とは、ラーメン評論家の第一人者であるとともに、TRYの審査員を第1回から20年に渡り、務め上げたレジェンド。
なお尾瀬さんはもともと、共に2020年、TRYの審査員になった“ラーメン官僚”こと田中一明さんに勧められ、「ラーメンWalker」(KADOKAWA)で、埼玉県のラーメンマニアとして“埼玉百麺人”を務めていた。
そうした実績もあり、「なんとなくあり得るかも、みたいな雰囲気はありました」と話す。
「実は前々から仲間内で、“もしTRYの審査員の話が来たらどうする?”なんてことは話していたんです。万が一話があったら、楽しそうだから一度はやってみようと思っていました。実際にTRYからオファーをいただいた時は、愚直に審査をする自信はあったものの、正直なところ他の人と違い、売りがあまりないので“本当に?”という感じでした。受けることはあらかじめ決めていながらも、迷うふりは一応しましたけど(笑)」
他の審査員と感覚が合わない時も(笑)
尾瀬さんにとってTRYの審査員参加前後の変化について聞いてみた。
「審査すること自体や順位を決めることはおこがましいという思いがあるので、審査員になる前は考えるところはありました。とはいえ、実際に食べ歩いて審査してランキングを決めることの大変さも感じていましたし、やっぱり『TRY』の結果は気にはなっていました」
「だからこそ、1軒1軒誠実にいただきたい」と話す尾瀬さんだが、実際に審査員になった感触はどうなのだろう。
「皆さんそうかもしれませんが、他の審査員と感覚が合わない時もあります(笑)。そのため審査結果に納得ができないことも当然あります。でも、それを覆すくらいの面白さがあるんです。これこそがTRYだな、と思うようになりました」
TRY審査員は個性豊かなメンバーが揃うからこその結果なのだ。
「TRYは、各メニューのうまい店を決めようというコンセプトなので、しょう油もしおもみそも、鶏白湯や汁なしも食べて、ようやく店の評価ができるんです」
「社会人になって数年後には、一般的に名店とされるラーメン店はある程度食べ終えていて、そこからは新店と地方の店を食べるというスタンスで動いていました。そのため、ひとつの店舗に対してそれほど深く掘っていなかったことに気づいたんです。特に汁なし部門は、他ジャンルに比べるとあまり食べていなかったと改めて感じました」
だからこそ、各店で提供されるそれぞれのメニューの深みに気づいたと話す。
4歳の時に、「替え玉」した息子の存在
父親でもある尾瀬さん。
「子どもが偏食で困っているのですが、とんこつラーメンは好きなようで、4歳の時には替え玉をしてびっくりしました」と笑う。
なんという英才教育か。将来有望ですねと話すと「真似はさせたくないですけどね」と苦笑する。
「ある程度量を決めて食べるのはいいと思いますが、この食べ方はやっぱり大変です。普段はできるだけ歩くなど運動をして、健康を保ちながらやっていけたら」
審査員たちが、それぞれの考えや思いでラーメンと向き合い、店の哲学に寄り添いながら真摯に審査を行う「TRYラーメン大賞」。その結果をぜひご覧いただけたらと思う。
文/市村幸妙、写真提供/尾瀬さん
いちむら・ゆきえ。フリーランスのライター・編集者。地元・東京の農家さんとコミュニケーションを取ったり、手前味噌作りを友人たちと毎年共に行ったり、野菜類と発酵食品をこよなく愛する。中学受験業界にも強い雑食系。バンドの推し活も熱心にしている。落語家の夫と二人暮らし。







