旬の食材は食べて美味しいだけではなく、栄養もたっぷり。本コーナーでは魚や野菜、果物など旬食材の魅力をご紹介します。
さて、今回のテーマとなる食材は?
文/おと週Web編集部、画像/写真AC
■春の訪れ
正解:桜
難易度:★★☆☆☆
独特の香りが魅力です
桜とはバラ科サクラ属に属する植物で、日本では春を象徴する花として親しまれてきました。多くの人にとっては“眺めるもの”という印象が強いのですが、実は桜は観賞だけでなく、古くから食用としてもさまざまに利用されてきた植物です。
桜の原産地については、かつては日本固有と考えられていた時期もありましたが、現在では日本・中国・朝鮮半島など東アジア一帯に自生する野生種が広く分布していることがわかっています。
日本でよく知られるソメイヨシノは江戸時代末期に人工的に作られた園芸品種で、原産地というより「江戸で生まれた桜」と言ったほうが正確です。
いっぽうで、山桜や大島桜、彼岸桜などは日本各地の山野に自生する野生種で、古くから日本の四季を象徴してきた存在です。地域ごとに花の色合いや葉が出るタイミングが微妙に異なるのも、自然の中で育まれた多様性ゆえの魅力です。
食用にされる桜の代表格は「オオシマザクラ」や「ヤエザクラ」です。とくにオオシマザクラの若葉は、塩漬けにすることで独特の芳香が引き立ち、桜餅を包む葉として重宝されます。
いっぽう、花びらの塩漬けには、色鮮やかで花びらが重なり合うヤエザクラの「関山」という品種が多く使われます。
食用の桜の旬は、花が春、葉が初夏です。
花の塩漬けに使うのは、満開直前のふっくらとしたつぼみで、3月下旬から4月上旬がもっとも適しています。
葉は若葉がやわらかい4~5月頃に収穫されます。
桜餅に使われる葉の独特な香りは、塩漬けや乾燥の過程で葉に含まれる成分が分解され、クマリンという芳香成分として現れることで生まれます。そのため、生の葉にはほとんど香りがありません。
花の塩漬けは湯に浮かべて桜湯にしたり、刻んでクッキーやパウンドケーキの生地に混ぜると、焼き上がりにふわりと春らしい香りが残ります。
葉の塩漬けは桜餅が代表的ですが、刻んで炊きたてのご飯に混ぜたり、白身魚を葉で包んで蒸すと香りがごはんや身に移って上品な仕上がりになります。
食用の桜は、おもに伊豆地方で葉の栽培が、神奈川県などで花の栽培が盛んに行われています。
産地では、もっとも状態のよい時期を見極めて一つひとつ手摘みされ、塩や梅酢に漬け込むことであの独特の芳香を引き出します。こうした地域ごとの専門的な栽培と丁寧な手仕事によって、私たちは1年を通じて春の香りを食卓で楽しむことができるのです。






