【沼田市中心部】段丘の上に市民の暮らしあり
分厚いとんかつに満足した私は、沼田駅に辿り着くと地図を手に入れ散策開始。スタートからすでに天狗が大渋滞だ。
駅前の石像は天狗、駅のホームや待合室にも天狗面、その横のコンビニ『ヤマザキYショップ想いで』までもガラス越しにお面が見える。が、面よりレジ横で店のお母さんが群馬名物、味噌まんじゅうを焼いているのが気になって仕方ない。
天狗は今日も、目を光らせています『JR沼田駅』
『Yショップ想いで』
味噌まんに釣られて入店すれば、隅にストーブと座布団があり、「熱い麦茶どうぞ」との張り紙が。コンビニが優しすぎて、それだけで沼田が好きになる。歩く前から充電して地図を片手に意気揚々と店を出た。
ところがである。商店街まで地図上は近いのに実際は遠い。なぜなら島根の「ベタ踏み坂」にも劣らぬ鬼の急坂が待ち構えていたからだ。
忘れていたがここは河岸段丘の町。市民の多くは台地の上で暮らしている。雪でも登れるよう、坂の途中で屋根付きの階段まで登場。息が切れて2度、休む。
そんな攻めにくそうな地形は、強固なお城にもってこい。真田氏ゆかりの『沼田城址』を歩く。小屋があったので覗くと天狗の目とあった。こんな天狗小屋がポツポツ街角に建っているが、喜んで覗くのは私くらい。珍しくもないのか足を止める地元民はいない。
真田氏ゆかりの天空の城下町『沼田城跡からの眺望』
続いて明治・大正時代の建物5軒を移築した『大正ロマンエリア』へ。そのうちの一軒が旧沼田藩主の息子で、刺身とパンを一緒に食べていたほどパン好きな土岐(とき)章子爵の家であった。仲間と始めたパン屋は殿様商売だったのか失敗に終わったものの、「パンの殿様」と呼ばれ「落花生みそパン」のレシピも残した。
『大正ロマンエリア』
[施設名]『大正ロマンエリア』
[住所]群馬県沼田市上之町
[営業時間]10時~17時
[休日]水(祝の場合は木休)
[料金]110円
[交通]JR上越線ほか沼田駅から徒歩20分
子爵の生涯を知れば、お腹がグウと鳴る。大通りをそれると「米穀店」なのにランチの立て看板を出している妙な店があった。
『カフェ・ナカムラ』の店主、中村一喜さんは市役所を退職し実家の米屋を大改造して夢だったカフェを始めたそう。聞けばかつて観光課におり、「とんかつ街道」を立ち上げるため先ほどの『金重』さんを訪れた人だと知って驚いた。
奥さんの作るフレンチトーストは絶品だった。「えだまメンチ」を考案した高校出身の子が卒業して小さなパン屋を始めたので、応援できたらと取り寄せたパンで焼いたのだという。
『カフェ・ナカムラ』フレンチトースト600円
店主:中村一喜さん、初美さん「日替わりランチやミートソースもおすすめです!」
『カフェ・ナカムラ』
[店名]『カフェ・ナカムラ』
[住所]群馬県沼田市坊新田町1117
[電話]0278-22-2214
[営業時間]10時~18時
[休日]月・日
[交通]JR上越線ほか沼田駅から徒歩20分
『福祉カフェippo』
[店名]『福祉カフェippo』
[住所]群馬県沼田市下之町888沼田テラス1階
[電話]0278-23-7330
[営業時間]10時~16時半
[休日]土・日・祝
[交通]JR上越線ほか沼田駅から徒歩20分
天狗や山伏や蛇にムカデの伝説は格別だけど、沼田の今もおもしろい。コンビニに座布団があって、お母さんが天狗を担いで、高校生がチャレンジしている。それはきっといい町だ。市内の天狗たちも団扇を振って応援しているに違いない。
『農産物直売所 街なか天狗プラザ』大天狗面
『スズキ時計店』
店主:鈴木治善さん「ドイツの手作り鳩時計は作り手の個性がでます」
『スズキ時計店』
[店名]『スズキ時計店』
[住所]群馬県沼田市上之町1155
[電話]0278-22-3459
[営業時間]9時~18時半
[休日]無休
[交通]JR上越線ほか沼田駅から徒歩20分
写真・文/白石あづさ…大学卒業後、地域紙の記者を経て約100か国3年間の世界一周後、フリーに。著書に『逃げ続けていたら世界一周していました』(岩波書店)、『中央アジア紀行 ぐるり5か国60日』(辰巳出版)、『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』(文藝春秋)、『世界のへんな肉』(新潮社)ほか
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