サンシャイン水族館/日々の乾きを潤す水塊のオアシス
筆者が考える水塊は、巨大水槽ばかりではない。サンシャイン水族館は、東京の中心地にありながら、都会の生活で乾いた心を潤いで包む水塊をいくつも用意してくれている。まさにこの水族館のコンセプトである「天空のオアシス」を体現した空間だ。
特にサンゴ礁のラグーンを再現した「サンシャインラグーン」は、正面のベンチに座って半日過ごす人まで出てくる人気の水塊だ。
白砂の浅瀬は、陽光に照らされて輝くエメラルドグリーンから、沖合を思わせる濃いコバルトブルーへと続いている。ここがビルの中であることも、水槽の前にいることさえ忘れてしまう。この水塊で、多様な魚たちの動きを見ていれば時間が経つのも忘れるというものだ。
一方でビルの上ならではの水塊が「天空のペンギン」だ。青空のグラデーションを借景にすることで、どこまでも広い海の開放感を表しており、ペンギンが海中を飛ぶ鳥だということが実感できる。頭上から降り注ぐ陽光の水紋に包まれるのも水中感たっぷりでいい。
アクアマリンふくしま/命の輝きで生まれた水塊
水族館の水槽はただの生き物の容れ物ではない。生きものたちが暮らす世界であり、水中の生き物たちは互いにその世界を織りなす景観となっている。それがよく伝わってくるのがアクアマリンふくしまだ。
この水族館では、来館者が森の中を歩くことから展示が始まっており、自然環境の中で水中を覗くという気持ちになる。
そのたどり着いた先で目にするのが「潮目の海」で、黒潮と親潮の境に立つことができる。「黒潮水槽」は、カツオの群泳とマイワシの大群による躍動的な水塊だ。
対する「親潮水槽」のほうは、ホヤ養殖の静的な水中景観となっている。この二つの大水槽の間を通る三角トンネルに立つと、波紋を通した陽光がキラキラと降り注ぎ、水中感をたっぷり味わえる。
「サンゴ礁の海」は筆者お気に入りの水塊だ。小魚の大群と色鮮やかな魚たちの群れに、活き活きと茂るサンゴ類、さらに海底にはチンアナゴの群生と、それぞれがお互いの生活空間を彩って景観が生まれている。本物の海に潜った時の感動が実感できるだろう。
北の大地の水族館/清涼感あふれる日本の川の水塊
水族館では人気の薄い日本の川の生物だが、川や湖の水塊を実現すればたちまち心を掴む展示になる。そんなことを実感させてくれるのが、北の大地の水族館だ。
北海道東部の北見市にある小さな水族館だが、魅力的な川や湖の水塊がいくつもある。
たとえば「滝壺水槽」。頭上に滝が落ちてその気泡が渦巻く様子が見られる。この泡の渦巻きの下には、美しい(そして美味しい)オショロコマ(北海道のイワナの仲間)が群れをなし、躍動する。私たちはその光景を、滝壺の底に棲む龍神や河童の目で眺めることができるのだ。
日本最大の淡水魚であるイトウの大水槽もある。イトウが好んで棲む北海道の湖を再現した水塊で、全国でも最大級のイトウが何尾も泳ぐ。
中央には冷たい湖に特有の枯れ木が見え、湖底に潜った気持ちにさせてくれる。生きているヤマメをイトウが捕食する「いただきますライブ」時には、静的な水塊が躍動感ある水塊へと変化する。
猛暑の日こそ、水族館で水塊に身を委ねてみてほしい。そこには冷房だけでは得られない、水の世界ならではの涼しさと癒やしが待っている。
中村 元(なかむら・はじめ)
1956年三重県生まれ。成城大学卒業後、鳥羽水族館に入社。アシカトレーナーから企画室長を経て副館長を務める。TBS系『わくわく動物ランド』『どうぶつ奇想天外』への映像提供をはじめ、ラッコブームの立役者として手腕を発揮した。2002年に独立後は「集客請負人」として活躍。「新江ノ島水族館」「サンシャイン水族館」「北の大地の水族館」など、独自のマーケティングと弱点を強みに変える斬新な展示で、数々の施設を奇跡的な増客へと導く。現在も国内外のいくつもの水族館で最新の展示を開発し続けている。慈慶学園COMグループ名誉学校長ならびに北里大学学芸員コースで博物館展示論を講義。おもな著書に『水族館の通になる』(祥伝社)、『水族館哲学 人生が変わる30館』(文藝春秋)、『常識はずれの増客術 』(講談社)ほか多数。最新刊は『新版 全館訪問取材 中村元の全国水族館ガイド129』。







