真夏を思わせる日々に、涼やかな場所を訪れたい。清らかな流れに癒されたい……そんな風に願う人も多いはず。2026年の夏は東京から抜け出して、埼玉の涼なる流れに出合う旅でひと休みはいかが? 今回の旅の行き先は秩父山系がもたらす、ミネラルを豊富に含んだ名水の郷、秩父長瀞エリア。名水百選にも選ばれた湧き水はもちろん、豊かな水資源を活かした食文化まで。水と涼を巡る旅に出かけてみませんか。
木漏れ日と水の音色のセッションに涼が宿る「寄居」
秩父、長瀞と関東平野をつなぐ入り口にあたる「寄居」に三方を山に囲まれた”涼風滞留”の沢あり。檜、杉、山紅葉、楓の森林が織りなす緑のグラデーションに抱かれて「風」の名がついた水辺に佇んだ。
読み方がわからない「風」の名がつく川
風の布の川、と書いて「風布川」。なんとも美しい名である。絶え間ない水音の中、まさに一陣の涼風が、川上からふぅっと流れてくるように感じた。いつの間にか、靴下を脱いでいた。木々の隙間から漏れ落ちる陽が、水面でダンスするのを眺めているうちに、読み方がわからない「風」の名がつく川青い針のように細い胴体のカワトンボが飛んでは休んでいる。
気持ちいい深呼吸をした場所の名前を覚えようとしたが、これが、読み方がなかなか覚えられない。それは人によって、看板によって、違うからなのだった。
渓流沿いの散歩道を歩くうちに、双眼鏡で鳴き声の方を覗き込むバードウォッチングのご婦人に出会い、「あなたはなんと呼んでいますか」と尋ねると、「私は『ふっぷ』。だって、口に出して気持ちいいでしょ。古い方はそっちが多い。新しく来た人は『ふぅぷ』。中には『ふうっぷ』と言う方もいます。気にしないで。きっとなんでもいいのよ」。ふっプ、フゥッぷ、とオオルリが鳴いた気がした。
風布の渓谷はこれから蛍。そして夏休みは水遊びの子らのもの。と思っていたら、路傍に一句が。
「風布川老いらせ遊歩道は恋の道」
奥入瀬(山の奥に分けいく瀬)と、エイジングした我が人生、を掛け詞にしている。鳥と水の音だけが響く時間を、贅沢に贅沢に進みながら、初恋のふたりが、夫婦になったふたりが、秘密のふたりが、歩いた道かもしれない。
姥宮(とめみや)神社を目指しての閑かで豊かな散歩道。今日のお供はひらひらとカラスアゲハだった。
『風布川』@寄居
[名称]『風布川』
[交通]埼玉県大里郡寄居町大字風布・金尾交秩父鉄道波久礼(はぐれ)駅より、夫婦滝まで徒歩12分。関越道花園インターより140号。駐車場は「日本の里観光駐車場」
撮影/鵜澤昭彦、取材/輔老心
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※画像ギャラリーでは、狛犬の代わりに「狛蛙」が鎮座する神社の画像をご覧いただけます。
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