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白い悪魔「シベリアおろし」も加担する?

そして3つ目。花の狂い咲きに加担しているのは、猛烈な季節風である「シベリアおろし」である。

名前からして獰猛そうな「シベリアおろし」だが、ロシアのバイカル湖あたりから3000キロもの長い旅をして2、3日で佐渡にやってくる。この爆風が佐渡の山にぶつかることで、高い木が育ちにくく、2000mの本州の森林限界地帯と同じような環境ができる。

さらに、この「シベリアおろし」は日本海で大量に水蒸気を吸い上げるため、佐渡には雪がたっぷり降る。大量すぎて春になっても雪溶けは遅く、これまた本州の2000m級の山の環境を作り出しているのである。これが佐渡で日本の南北両方の花だけでなく、2000m級の山でしか見られないシラネアオイやオオイワカガミなどの花がわんさか咲く理由らしい。

標高1000mなのに日本アルプス級の気候を持つ佐渡の山。お陰で特別な山の技術がなくても、ドンデン山荘までのバスに乗り、その周りを少し歩けばアルプスで咲く高山植物が待っている。佐渡の山は、つまらぬどころか知れば知るほど面白い奇跡の山なのだと知った。

アンシンメトリーな尾根をゆく

静かな樹林帯が途切れると、前方に山の尾根道が見渡せた。それが何とも不思議な景色であった。尾根を境に日本の本州側(南側)は緑の低木が茂っているのに、ロシア側(北側)は植物が育たず赤褐色のザレ場が下まで広がっている。ここまではっきり左右違う尾根はあまり見たことがない。

髪の毛を片側だけ剃ってアンシンメトリーにしたロックな頭のミュージシャンを思わず思い浮かべたが、この奇妙な光景を造ったのは、悪魔のような「シベリアおろし」の仕業であろう。

「シベリアおろし」の影響? ロシア側だけハゲている
「シベリアおろし」の影響? ロシア側だけハゲている

その尾根のさらに両外側には曇り空の下、うっすら青い日本海が見える。片側だけ海がある景色はあれど、両側に海が見える尾根なんて滅多にない。これも佐渡の山ならではの景色だ。

樹の陰から体を出してみたが、カッパのフードが強風でひっくり返って、まるで意思のある生き物のようにベベベベ! と右頬を激しく連打するので、あわてて木々の間に引っ込んだ。初夏でもおそらく今でも風速20メートルくらいあるのではないか。先に歩いている1組の登山客が腰をかがめ、時折、手をつきながら苦労して進んでいるのが見える。

風が弱まった瞬間を狙って、飛び出しタッタと足早に進む。が、すぐにブオオオオと悪魔のようなうなりを上げ、山の斜面沿いに下から風が吹きあがる。ブワッと持ち上げられそうになって、慌てて地面に這いつくばりじっとする。風がやむと走りまた伏せる。ひとり「だるまさんが転んだ」のようにジリジリと悪魔風をやり過ごした。

風に苦労しているハイカーたち
風に苦労しているハイカーたち

景色を味わう余裕がないまま次の樹林帯に逃げ込むと、ピタッと風が止んだ。いつもは景色が見えずつまらないとぼやいていた樹林帯を今日は讃えつつ、山頂・金北山を目指す。

途中ですれ違った地元の登山客に「風が強くてびっくりしました」と話したら、「ハハハ。関東から? うん、まあ、佐渡は普段からこんなんちゃ」と笑われてしまった。私がぜいぜいと肩で息をしながら死にそうになって歩くこの縦走路は、毎年、冬のシベリアおろしと豪雪に耐えている地元の人にとって、なんてことない道なのだろう。

大佐渡山地縦走の後編では、「佐渡のマチュピチュ」と呼びたくなるくらい不思議な金北山の山頂について綴ります。第5話に続く。

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白石あづさ
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