中世には貴族が流された絶望の「流刑の地」として、江戸時代には欲望が渦巻く世界最大級の金山としてその名を歴史に轟かせた佐渡島。独特の文化や自然が残る日本海最大の離島を、文豪・太宰治は、小説で「死ぬほど淋しい」と綴ったけれど実際どうなのか? 長年の謎に答えを出すべく北から南まで6日間かけて一周しました。
前回(第2回目)の版画だらけの大川集落に続き、第3話では佐渡最高峰の金北山の玄関口、ドンデン高原に建つ山荘でのどんでん返しな一夜を綴ります。
普段の行いが悪すぎた?
佐渡島2日目。ザアザアと降りしきる雨の音で目が覚めた。眺めが自慢の旅館『きらく』の部屋の窓には、大きな雨粒がビチビチと打ち付けている。布団から這い出てカーテンを開けると、昨日、見えていた山々も目の前の加茂湖も白い霧に吞み込まれていた。
この佐渡の旅のハイライトは、今日から明日にかけての島の北側に広がる大佐渡山地の縦走であった。1日目は両津港から季節運行のバス「ドンデンライナー」(4月末~5月末に運行)でアオネバ登山口へと向かい、そこから標高900mのドンデン高原へ登る。そしてドンデン高原ロッジで1泊、翌日は佐渡最高峰の1172mの金北山から白雲台へと降りていく1泊2日の絶景ルートの山行を計画していたのだ。
私はヤモリのようにじっと窓に張り付いたまま考えた。そうか、きっと普段の行いが悪すぎたのだ。思い当たるフシが多すぎるので仕方がない。潔く今日の山歩きは中止にして、林道を通る直行バスで直接、終点のロッジまで乗ることにした。
車窓を流れる霧の林道はどこか幻想的で、湿度を孕んだ東南アジアの密林を思わせる。もしかしたら雲の上の高原は晴れていて雲海が広がっているのではないかと、潔く諦めたはずなのに思わず期待したが、終点のドンデン高原の視界はわずか5m。むしろ「雲どまん中」に辿り着いた。
バスを降りて霧の中を泳ぐように手を伸ばしながらソロソロと登っていく。数分後、もやの中から現れたのは、八角形のトンガリ屋根が印象的なかわいらしい木造の建物であった。これが今日、泊まる『ドンデン山荘』だ。
……と、思ったら、看板がなぜか「山荘」と「ロッジ」のふたつある。地元の人は「ドンデン山荘」と呼んでいたので、もっと登山客が出入りする山小屋風のごつい建物を想像していたが、軽井沢にでもありそうなペンション風だ。
入口に置かれた食堂の看板メニューもしゃれていて、おそるおそる扉を開けるとプロポーズで使われそうな夜景を楽しみながら乾杯している写真が掲載されたパンフも置いてある。上下登山服とザック、無骨な登山靴で来てしまった私は、もしかしたら場違いかもしれない。登山客は近くの避難小屋などに泊まるのだろうか。



