ドンデン返しの夜
「高原ロッジ」は、山小屋と違って雑魚寝ではなく部屋はグループ毎に個室で、2台の2段ベッドが置かれている。トイレやお風呂は共同だが清潔だ。廊下に湯沸かしポットなども常備されていて、山小屋と旅館のちょうど中間といったところだろうか。花の多い春から初夏は登山客が多いが、それ以外の季節は一般客が多いらしい(冬季は休業)。
夕刻になり、先ほどランチを食べた食堂にはビュッフェがセットされていた。焼きそばや唐揚げなどのB級グルメからサラダ、ロールキャベツにシュウマイなど20種類ほどのメニューが並んでいる。
学生時代、北アルプスの山小屋でアルバイトをしていた私には、水の限られた山の上での食事の提供の難しさがよくわかる。ドンデン高原ロッジは電気も通っているとはいえ、両津港から標高900mも上がらないとならないし、きっとこの料理の数々も大袋に入った業務用のレトルトをただ温めたのだろうと、あまり期待もせずにシュウマイをかじったのだが、口の中ではじけた肉汁の旨さと玉ねぎの甘味に土下座して謝りたくなった。あの横浜の名店にも負けていない。
シュウマイだけではない。ロールキャベツは箸で切れるほど柔らかく、唐揚げは衣はカリっと中はジューシー。ニンニクとショウガが効いていていくらでも食べられる。
「いかがですか?」
皆が「おいしい!」という声を待っていたかのように、先ほどの新人さんや山男たちとは違う、本当の支配人らしき年配の男性が出てきて、誇らしげに料理や酒の説明を始めた。
どうやら登山客で混みあう初夏の登山シーズン以外はフレンチのコース料理を提供しており、今日のような大皿のビュッフェでも同じシェフが担当しているという。シュウマイやロールキャベツはもちろん、手作りにこだわって丁寧に作っているそうだ。



