薮地獄を進むことにした
さて雪の壁に踏み跡はあるものの、念のため雪山用の軽アイゼン(登山靴につける爪)を持ってきてよかった。崖に垂れ下がるロープを握りしめ、ようやく雪の壁を乗り越えると、今度は雪で倒れた大量の藪! 払っても払ってもムクムク湧いてくる。
「そんなゲームあったなあ、あれはキノコだっただろうか」などと幼い頃をなぜか懐かしく思い出しつつ、今さら戻るにしてもあの雪の壁を下るのもしんどいので、これは何かの修行だと思い藪地獄をしばらく進むことにした。
四苦八苦していると、ポンと平坦な尾根道に吐き出されて唐突に地獄が終わった。きっと山頂はもう少しのはずだ。佐渡の最高峰である金北山(きんぽくさん)は、もともと「北山(ほくさん)」というシンプルな名前であったらしい。しかし、佐渡で金が発見されてからは、「金北山」と呼ばれるようになったのだとか。
霧の中、ついに山頂らしき頂がうっすらと見えてきた。山の天気は変わりやすい。もしかして、山頂に着いた途端、晴れたりして。
そんな甘い期待とともに、息を切らせてたどり着いた山頂の手前で、目に飛び込んできた異様な光景に思わず「は?」とのけぞってしまった。山頂になんか奇妙な建物があるね……しかも渋谷センター街の裏路地並みに人工物がみっちり、ぎゅうぎゅう……。
昔、同じような衝撃がどこかであった。ああ、ペルーのマチュピチュだ。大自然の中をずっと歩いてきたのに、不意に人工的な都市の遺跡が山の中に現れるあの不思議な山旅を思い出した。
心の中で「佐渡のマチュピチュ」と勝手ながら名付けた山頂を、私は改めて見回した。木造の小さな神社はよく日本の山頂にあるので違和感はない。けれどその両側の錆びたトタンで覆われた建物は一体、何であろう。神社の右側は四角く左側は円形だ。四角い方は廃業した山小屋かしら? と考えたが、それにしてはいかつすぎる。円形に至っては窓がなく一体、何に使われている建物なのか検討がつかなかった。



