弥栄町の田園に面した竹野酒造。「弥栄鶴の名は弥栄町の地名に縁起のいい鶴を合わせた」と5代目・行待さん。
麹室は麹の仕込みが始まると30℃以上に蒸された空間になる。酒の味を左右するデリケートな空間。
通年で20℃以下に保たれている仕込み蔵。米を投入できるよう天板は外れる仕組み。仕込み水は蔵の地下深くの伏流水と、その上にある比較的浅い地盤からも採取される。
貯える意味を持つ「蔵」に、無形の精神を伝える「舞」を合わせた〈蔵舞(くらぶ)〉は、行待さんが大切に育てている主力シリーズ。「近年やっと“くらぶ”と読んでもらえるようになりました」と笑う。
販売コーナーでは一般に流通しない高級ラインや、少量生産品も含め竹野酒造のすべてのラインナップが購入可能だ。
器によっても変化する味わいをテイスティングしてもらうため、フルボディの赤ワインに使うような大ぶりの特注グラスも用意する。
2017年に発売された〈in/ei(陰翳)〉を皮切りに、マットな黒ボトルで統一した高級ラインは世界市場を意識した酒。日本料理にこだわらず、フレンチやイタリアンにも合わせられる味わいを長期熟成で実現させた。
蔵の隣に建てられたテイスティングにも使用するバー『bar362+3』。こちらでは予約制で海外向けの高級ラインの試飲も可能(有料)。
5代目の行待佳平さん。酒造りはクリエイターの息子たちにまかせ、地元農家のとの協力体制や国内・海外販路の拡大に注力する。
趣のある白杉酒造。一般流通で品切れになる商品もあるため、直接購入しに訪れる客が絶えない。
蔵に併設する店舗を訪れると店内には酒造許可の古文書が掲げられている。
白杉酒造の仕込み水は、蔵の下を通る地下水で超軟水。一般的に口当たりのなめらかな酒ができると言われる。
お酒の量を測るための目盛りが付いた検尺棒は昔ながらの木製。昭和2年に起きた丹後地震では蔵一棟が全倒壊。現在の蔵はその際に再建された。
雑味のないきれいな酒を目指した100%丹後産コシヒカリの純米酒〈shirakiku BLACK LABEL vivrant〉。酒母に使用した黒麹のクエン酸がもろみをよく溶かし、米の味わいと酵母の香りをくっきり引出した。コシヒカリはふくよかでまろやかな口当たり、ミネラル感と味の広がりが特長的。
〈ブラックスワン〉はミルキークイーンを黒麹メインで仕込んだ微発泡で甘酸っぱさが楽しめるお酒。新商品の〈光芒(こうぼう)〉はコシヒカリに京都オリジナル酵母〈京の華〉を使用。華やかな芳香を放ち、フルーティーな甘口でクリアな味わい。
実は地元に愛される〈白木久〉レギュラー酒は今年の春で一旦終売に。「胸を張っておいしいと言える純米で「白木久」ラベルの商品を改めて造りたいと思っています」と白杉さん。
酒米に比べて粘りのある食用米を使った酒は、当初はくどい酒になってしまったそう。食用米を扱うコツもつかみ、「近年はだいたい狙った味をつくれるようになったと思います」と白杉さん。
先斗町歌舞練場の歴史ある建物の斜め前。小さな看板と杉玉が目印の『SHUKURA 酒蔵』。
装飾を排したすっきり清潔感のある店内はカウンター6席と4人掛けのテーブルふたつ。
うれしい飲み比べセット「京都&滋賀のセット」(2,000円・税込)は3種をたっぷり80mlで提供する。圧倒的な人気メニューで、京都だけ、滋賀だけのリクエストもOK。
〈京の焼き油あげ〉(800円・税込)は、料亭御用達の老舗豆腐店『近喜』のお揚げを香ばしく焼いたもの。国産大豆と京の水でつくられた「お揚げ自体がとてもおいしい」、ハズさない一品だ。
自家製の燻製は、エビ、塩サバ、辛子めんたいのセット(1,200円・税込)。料理のラインナップは、ほぼつまみのみ。ポテサラからオイルサーディンや鯖缶・鶏缶の缶詰アレンジ、酒盗や沖漬けなどの珍味も。
これからの季節は熱燗ぬる燗にも惹かれる。チロリは三十三間堂の西側にある『鍛金工房ウエストサイド33』のもの。
オーナーの澤村大介さんは、関西を中心に蔵元めぐりも欠かさない。この日は丹後の竹野酒造、白杉酒造のお酒もラインナップ。季節モノや限定品など次々入荷するので、新入荷のメニューも要チェックだ。