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石巻線は東北本線と接続する小牛田駅を起点とする単線、非電化のローカル線です。 2015年までは国鉄時代から走り続けるディーゼルカーも走っていました。 白と緑色に塗られた車両で、田舎の風景によく合っていて、これを目当てに撮影に出かけました……。 今回は、大震災以降の石巻線と女川駅付近で出会ったホヤのお話です。

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復興進む石巻線女川駅でホヤ三昧/2011年~2019年

前回は石巻線の女川駅とおいしいカキのお話でした。
今回は、大震災以降の石巻線と女川駅付近で出会ったホヤのお話です。
石巻線は東北本線と接続する小牛田駅を起点とする単線、非電化のローカル線です。
2015年までは、国鉄時代から走り続けるディーゼルカーも走っていました。
白と緑色に塗られた車両で、田舎の風景によく合っていて、これを目当てに撮影に出かけました。

国鉄時代からのディーゼルカーも走っていた(2011年撮影)

現在は、すっきりとした色合いの新型の車両が軽快に走っています。

現在走っているキハ110(2019年撮影)

もうひとつ。
撮影に行くのに魅力的な列車が、ローカル線にしては珍しい貨物列車です。
それも最大時には1日10往復程度と、驚くほどの本数です。
貨車の種類は、ほとんどがコンテナ車。
港町からの貨物列車なので海産物かと思えば、さにあらず。
実は出版業界とは縁が深く、印刷用の「紙」が主な荷物です。
印刷用の紙の工場が多い石巻から各地の印刷所へと、日々用紙を送ってくれています。
雑誌や本で仕事をしているカメラマンとしても、ほんとうにありがたい列車です。

印刷用の紙を中心に運ぶ貨物列車(2005年撮影)

2011年の大震災のあと、小牛田駅から石巻駅の間は比較的早く、5月に復旧しました。
この年の秋11月には、石巻の早期復興を願って、SL宮城石巻復興号が走って、多くのファンを集めました。
(仙台駅始発で、小牛田駅まではディーゼル機関車けん引、小牛田駅~石巻駅間をSLがけん引)

2011年11月に走った、SL宮城石巻復興号の試運転列車(2011年撮影)

復旧した石巻駅。石巻は、
漫画家石ノ森章太郎のふるさと(2011年撮影)

復旧した石巻駅には
石ノ森キャラクターがいっぱい(2011年撮影)

被害の大きかった石巻駅~女川駅間も、2012年には石巻駅から2つめの渡波(わたのは)駅まで開通。
段階を経て2015年には、女川駅までの全線で運転が再開されました。

2012年に終点だった渡波駅(2012年撮影)

ホームの先に車止めがあった(2012年撮影)

女川で、『海のパイナップル』ホヤを満喫!

そうして開業した終点の女川駅。
早いうちに行きたいと思っていたのですが、なかなかタイミングが合わず、結局ちょうど4年が経った春の訪問になりました。

新しくなった女川駅に
ディーゼルカーが到着(2019年撮影)

そこで出会ったのがホヤです。
前回紹介したカキも冬が旬ですが、まだシーズン中。
そのうえ、訪れた3月中旬はホヤの出荷初日でした。
カキもホヤも味わえるラッキーな時期の訪問になりました。

女川駅前の商業施設「シーパルピア女川」にある市場をモチーフにしたハマテラスには水揚げしたてのホヤが並んでいます。
真っ赤なホヤはきれいで、『海のパイナップル』とはよく言った……という形状です。

水揚げしたてのホヤがいっぱい(2019年撮影)

海のパイナップルとは
よく言ったもの(2019年撮影)

さてこのホヤですが、私は子どものころ、食べられなかったものの筆頭でした。
まず、ホヤといって思い出すのが、列車の車内販売で売っていた珍味のおつまみです。
ビールのあてのホヤを少し分けてもらって、茶色い塊をおそるおそる口にしたときの衝撃……。
珍味でした。
もちろん今はおいしくいただけます。

ホヤといえば、
これを思い出す(2017年撮影)

ホヤの刺身を最初に食べたのは大学生のころ。
三陸久慈の方と列車で出会って、家に招いてもらい夕食にいただきました。
大学生のころには、ちょっときつい……。
でも、せっかくのご厚意なので必死に食べたのを覚えています。
ところが最近食べると、おいしい。
まあ、クセはありますが、そこがおいしくて何がダメだったのかわかりません。
時とともに味覚は変わるんですね。

以前に宮古で食べたホヤの刺身(2014年撮影)

ハマテラスで新鮮なホヤを眺めつつ……。
今夜の車内食にと考えていたのですが、ホヤは切ると大量の海水が噴き出すので車内調理には向きません。
事前に切ってしまうと味が落ちてしまうし……と考えていると、隣にパックに入ったボイルホヤを見つけました。
これならいける!
購入決定です。
夜になって調理を開始、まずはカラを開いて切り身でいただきます。
口に入れると海の香りがいっぱいに広がります。
ちょっとわさびをつけて食べてもさわやかでおいしくいただけます。

購入したボイルホヤ(2019年撮影)

パックを開けると
こんな感じ(2019年撮影)

身をカットしていただく(2019年撮影)

わさびをつけてもおいしい(2019年撮影)

次は煮つけにしてみました。
カットしたホヤと酒、少しの醤油で軽く煮ます。
あっという間に車内は海の香りでいっぱいです。
食べてみると、コクがぐっと増して、うまみも倍増。
少しだけ取り出して食べてから、残りを汁ごとパスタにしてみました。
これは『海のパスタ』と呼びたいほどの、抜群のおいしさでした。

ボイルホヤのカットを
酒と醤油で軽く煮る(2019年撮影)

ホヤの煮物完成(2019年撮影)

さらにパスタへ発展(2019年撮影)

お土産にも最適!? ホヤの加工品もご紹介!

イチオシは“ほやたまご”です。
パックにはいった丸い形で、なんとゆでたまごをホヤで包んでいます。
食べてみると不思議な味。
ゆでたまごの香りとホヤの濃厚な香りがぴったり。
おいしいひと品です。

女川でみつけたほやたまご(2019年撮影)

ゆでたまごをホヤで包んである(2019年撮影)

次は、女川産ほやのお茶漬け。
ごはんにさらっとのせて、お湯をかけるだけ。
簡単にホヤの味が楽しめます。
豆腐をおわんに入れて、このお茶漬けをのせてお湯を多めにかけると、ホヤの吸い物もおいしくいただけました。

女川産ほやのお茶漬け(2019年撮影)

ごはんにかけて、お茶漬け簡単(2019年撮影)

豆腐をつかって吸い物もおいしい(2019年撮影)

もうひとつ気に入ったものが、ほや塩です。
地元の学校、宮城県立支援学校女川高等学園食品製造コースの生徒さんたちが開発したもので、かわいいパッケージに入っています。
家に帰ってから、まずは白ご飯のおにぎりにかけてみました。
塩味とともにホヤのコクが蘇ってきておいしいおにぎりになります。
フライドポテトや天ぷらにもかけてみたのですが、いちばん気に入ったのは、ゆで卵。
“ほやたまご”もそうですが、ホヤの味とゆで卵の味はよく合います。

女川の学生さんたちが開発した
ほや塩(2019年撮影)

久々に出かけた女川の町でたっぷりと味わえたホヤ。
この味がわかるようになって、大人になってよかったなと思う旅でした。

佐々倉実(ささくら みのる)
 鉄道をメインにスチール、ムービーを撮影する“鉄道カメラマン”、初めて鉄道写真を撮ったのが小学生のころ、なんやかんやで約50年経ってしまいました。鉄道カメラマンなのに撮影の8割はクルマで移動、列車に乗ってしまうと、走るシーンを撮影しにくいので、いたしかたありません。そんなワケで年間のかなりの期間をクルマで生活しています。趣味は料理と酒! ヨメには申し訳ないのですが、日々食べたいものを作っています。
 鉄道旅と食の話、最新の話題から昔の話まで、いろいろとお付き合いください。
 ちなみに、鉄道の他に“ひつじ”の写真もライフワークで撮影中、ときどきおいしいひつじの話も出てきます。なにとぞご容赦ください。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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