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前回は空也上人立像をご紹介しました。が、せっかく京都に来たのですから、以前から気になっていた別の仏像を見に行きたいと思います。後ろを振り返ったポーズの仏像です。「見返り美人図」は菱川師宣の代表的な浮世絵ですが、右を向いています。さて、問題の仏像は、どちらを振り向いているのか?

永観堂禅林寺:みかえり阿弥陀はなぜ後ろをふり向いたのか?

空也上人立像は教科書でも取りあげられて有名ですが、2体目は趣きを変えて知る人ぞ知る珍しいポーズをした仏像に会いに行きました。

拝観したのは、永観堂禅林寺にある「みかえり阿弥陀」です。正式名称は阿弥陀如来像です。

みかえり阿弥陀はその異名の通り、なぜか首を左に向けています。「見返り美人図」の女性とは逆向きです。後ろを振り返るように、まるで誰かに話しかけるような動きです。

この仏像が安置されている永観堂禅林寺の第7世住持は、永観律師(ようかんりっし)です。1028年(永保2年)2月15日の払暁、永観律師が底冷えするお堂で阿弥陀仏像のまわりを念仏を唱えながら行道していたというのですが、突然須弥壇に安置されていた阿弥陀仏が降りてきて永観律師を先導して行道を始めたというのです。永観はその姿に驚き立ち尽くしていたところ、阿弥陀仏が、「永観、遅し」と声をかけたという伝承があります。

当時、永観は50歳だったといいます。東大寺別当まで務めた永観は、一日6万編もの念仏行を行い、「念仏宗永観」と呼ばれた高名な僧侶でした。永観律師の仏様を慕う想いをくんで、阿弥陀様が目の前に現れたのかもしれません。

実際に目の当たりにすると、このみかえり阿弥陀はヒノキ造りで77cmと決して大きな仏像ではありません。空也上人立像は120cm弱ですが、それよりも小さい仏像です。しかし、その存在感は有名な大ぶりの仏像に勝るとも劣りません。

その通称の通りに後ろを振り返っているに見えるこの仏像は、まるで救済を求める人々を先導しながら温かく見守り、守護してくれているかのようです。訪れる人々にとって親しみと安心感を提供してくれます。

私も、その優しい表情としぐさに癒されました。多くの人々がこの仏像の前で祈りを捧げ、心の平安を求めたのでしょう。この仕草をした仏像は全国でもほとんどない、といわれるので一見の価値はあります。

静かな佇まいの永観寺

また、みかえり阿弥陀をご本尊とする永観堂禅林寺は、秋の紅葉が素晴らしいことでも有名です。3000本のもみじが紅葉する様は、まさに壮観で多くの観光客を集めています。

新緑の季節も心がわき立つ

私が左京区にある永観寺を訪れたのは初夏ですが、青もみじも清々しく目に染み入るような鮮烈な印象でした。境内へ足を運ぶと、もみじで埋め尽くされた美しい庭園が目に入ります。池を中心に配置された石橋や灯籠、生い茂るカエデが創り出す風景は、まるで絵画のようです。

寺院内の美観

永観寺は浄土宗西山(せいざん)禅林寺派の総本山で由緒ある名刹です。釈迦堂、御影堂、阿弥陀堂などが回廊でつながっています。中でも山の斜面に沿って作られた廊下は、龍の背中の上を歩いているようで「臥龍廊(がりゅうろう)」と言われています。

うねって急勾配の臥龍廊

山頂の方には多宝塔があり、市内を見渡せます。この眺望も一見の価値があります。

多宝塔から見た京都市内

このように、四季折々の美しさを楽しみ、心を落ち着ける場所として「永観堂禅林寺」は、大人の週末にぴったりです。自然の美しさと静謐な時間を満喫しながら、京都での特別な旅を過ごしてみてはいかがでしょうか。

紅葉シーズンは観光客でごった返すこのお寺ですが、初夏のシーズンは新緑も楽しめてゆっくりと拝観できました。

永観律師とみかえり阿弥陀
御朱印

永観堂禅林寺

京都市左京区永観堂町48
9:00〜17:00(受付終了16:00)
拝観料:600円

空也上人立像、みかえり阿弥陀と見てきましたが、最後に王道中の王道のお寺を訪ねてみたいと思います。

*JR東海の「そうだ 京都、行こう。」シリーズでは、「あなたは、どの仏像から入りますか?」キャンペーン(2023年5月20日~9月30日)を行なっています。詳細は、以下の特設サイトにリンクしてください。

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この記事のライター

おとなの週末Web編集部 出樋
おとなの週末Web編集部 出樋

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