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先週末まで、東京駅の八重洲中央北口が、空也上人のパネルでジャックされていたのをご存知でしょうか。柵に囲まれた中に何体もの空也上人立像(くうやしょうにんりゅうぞう)があるのは、やや異様な印象も受けました(笑)。まさに、空也上人だらけです。

また、空也上人立像を取り上げたテレビCMも気になります。

東京駅の八重洲コンコースは空也上人パネルであふれた(2023年5月20日~6月18日)

これを機に、話題の空也上人立像を見学に行ってきました。知っているようで知らない空也上人は、どんな人物か?なぜ、空也上人立像の口から小さな仏像が飛び出しているのか?

まだまだ蔓延しているコロナのような、当時の疫病(感染症)を人々から救った功績もあるようです。

いざ、京都へ。

六波羅蜜寺:空也上人は「天皇のご落胤」という説も

新幹線で京都駅に着き、電車を乗り継ぎ清水五条駅で降りて、7分ほど歩きました。

空也上人立像が置かれる六波羅蜜寺(ろくはらみつじ)は、京都市東山区に佇む美しい仏教寺院です。

空也上人没後には平家から庇護を受けた六波羅蜜寺

教科書でもおなじみの空也上人とは、どのような方だったのでしょうか。

空也上人は諸国を遍歴しながら修行を積み、「南無阿弥陀」と唱える口称念仏(こうしょうねんぶつ)の教えによって人々を救済した僧侶です。一説には、醍醐天皇の皇子という説もありますが、真偽のほどは分かりません。

庶民の中に分け入って教えを広めると共に諸国に道路や橋などを作る社会事業にも力を尽くし、「市聖」と民衆に敬意をもって呼ばれました。

また、空也上人は平安時代中期のころ京都市中に流行した疫病を退けるために尽力しました。自ら十一面観音像を刻み、その像を台車に乗せて市中を巡って疫病退散を祈願したと言います。この疫病は、現在の新型コロナのような悪質な感染症だったのかもしれません。

空也上人は、新しい井戸を掘り、小梅干しと結昆布の入ったお茶を病人に与えて念仏を唱えるなどして、疫病を鎮めたと言われています。

空也上人が疫病を治癒したという話に由来した「皇服茶」(正月三が日に供される)

六波羅蜜寺を訪れ、空也上人立像を実際に目の当たりにしました。ガラス越しですが、最前列ですと1mもない近さで拝観できます。

寄木造りのやや黒ずんだ木像は、長い歴史を感じさせます。左手に鹿の杖を携え、胸に金鼓を下げて右手に撞木を持ち、短い皮衣に下に草鞋を履いています。両脚の血管は浮かび上がり、草履の藁の微細な様子も再現され、皮衣のしわなども表現された写実的な仏像です。

表情は人々の安寧を願うかのようですが、一方で、空也上人の祈りの強さ、迫力を感じます。高さは120cm弱の像ながら、空也上人の生き様と仏師の執念が伝わり、お像の大小を超えた深淵なる仏教の世界へと誘ってくれます。

痩躯の空也上人立像。空也上人は庶民の中に溶け込んで布教を続けた(提供:JR東海)

空也上人立像は写実的な印象を受けると、先ほど表現しました。しかし、イメージとはかけ離れた表現方法が、このお像の真骨頂かもしれません。

それは、上人の口から出ている小さな6体の仏像です。「南無阿弥陀仏」と唱えた声が、阿弥陀如来の形になった瞬間を表現したと言います。仏像が口から出てくるという形状は、空也上人の説法、つまり仏教の教えを広める役割を象徴していると考えられます。

「南無阿弥陀仏」の6体の仏が空也上人の口から出る様と祈るような上人の表情が印象的だった。法然上人より先に口称念仏を広めた。

この空也上人立像は、運慶の四男・康勝の作品です。康勝が20歳の時の作品と言われていますが、この像は平安時代に生きた空也が亡くなってから約250年後(鎌倉時代)に作られたものです。

康勝作の空也上人立像が置かれている六波羅蜜寺は、十一面観音像を本尊として空也上人が開創した寺院です。当初は西光寺と呼ばれ、その後に六波羅蜜寺に改称しました。

鞍馬山で閑居後に、その鳴き声を愛でていた鹿を猟師に撃たれた。鹿の皮を身にまとい、角を杖頭にして生涯離さなかったという

最後に、再び空也上人について触れます。

空也上人の言葉に、このようなものがあると言われています。

「何(いづ)くにも身を捨ててこそ」

庶民のために身を投げうった上人の想いが形になった、この空也上人立像。京都を訪れたら、必見です。

六波羅蜜寺

京都市東山区ロコロ町81-1
8:00〜17:00 令和館8:30〜16:45(受付終了16:30)
令和館拝観料:600円

この後、2寺を訪れました。日本全国でも、ほとんどないといわれるポーズをした仏像の記事は後日公開します。

御朱印

*JR東海の「そうだ 京都、行こう。」シリーズでは、「あなたは、どの仏像から入りますか?」キャンペーン(2023年5月20日~9月30日)を行なっています。詳細は、以下の特設サイトにリンクしてください。

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おとなの週末Web編集部 出樋
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