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酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?力強さとフルーティな香りが絶妙に絡み合う。歴史ある酒を醸す新米の杜氏は、郷里の肴と妻の味で束の間の休息を楽しむ。

2024年、静岡市『三和酒造株式会社』の杜氏に就任

【宮崎啓氏】

宮崎啓氏

1985年、福岡県生まれ。大学時代に日本酒の奥深さに魅かれる。関西の日本酒蔵に入社し、醸造をはじめとする業務全般に携わる。2022年三和酒造に入社。2024年に杜氏に就任。趣味はピアノ演奏と合唱。

冷酒が常温になるまでをゆっくりと

「一番よく飲むのは『臥龍梅 純米酒』。よく冷やして常温に戻るまでゆっくり2合ほどを酌む」と杜氏は言った。「臥龍梅」を醸す三和酒造の杜氏・宮崎啓さんだ。同蔵は伝統的に南部杜氏が酒造りを担ってきた。次期からは前任の杜氏のサポートのもと、宮崎さんが社員杜氏として約5名の蔵人を束ねる。

五百万石や静岡県独自酒米・誉富士など10種以上の米をさまざまな精米歩合で使うため、原酒の数は50種を超える。商品も多彩だが、共通するのはほどよいフルーティな香りと、すっきりときれいな酒であることだ。

「味のふくらみを大事にしながら、飲みやすさを追求していきたい」と宮崎さんは意気込みを語る。

その晩、蔵の休憩室のテーブルには、宮崎さんの故郷である北九州市小倉から届いたお母さんお手製のぬか漬けとぬか炊き、奥さんが作ったひじきの煮物が並んだ。鈴木孝昌専務と作戦会議の晩酌である。

ちょうど実家から届いたぬか漬けとサバのぬか炊き、奥さんお手製のひじきの煮物を肴に晩酌。ぬかを使った料理は日本酒とは米つながりで相性がいい。ひじきの煮物はツナやトマトが入った洋風タイプで特に宮崎さんの大好物

小倉はぬか漬けの本場。発酵の酸味が効いたシャープな味わいに、「ああ、実家の味だ」と宮崎さんが笑う。そのぬか床、生姜や山椒などと青魚を炊いたぬか炊きも滋味に富む。「ぬかの発酵感と深みのある塩気には、五百万石を使った純米吟醸 超辛口が合うなあ」とふたりは杯を重ねる。

ひじきの煮物はトマトやトウモロコシが入った夏仕様。ラタトゥィユを彷彿させる妙味に鈴木さんも「うまっ」と感動しきりだ。生まれてずっと海の幸に恵まれた地域で過ごしてきた宮崎さんだが、清水に来てからは食べ物が変化したと言う。

「白身魚を食べる機会が減りました。清水は何と言ってもマグロ。鮮魚売り場はどこも全体がピンクなんですよ(笑)。さすがマグロの旨さはピカイチ。上品な甘み、ほのかな酸味は臥龍梅と相性抜群です。そして忘れてならないのがワサビ。新鮮で上質なワサビがマグロのおいしさを引き立ててくれるし、酒にもバッチリ合う。地元の人はありがたみを感じていないようだけど」と宮崎さん。「考えもしなかった。確かに地元の生ワサビでなきゃね」と言う専務と、ほらねと顔を見合わせた。

きれいな静岡の酒が故郷・小倉の思い出の味とも響き合う
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1686年創業、仕込み水は南アルプスの伏流水「臥龍梅」...
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おとなの週末Web編集部
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