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酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?今回は栃木県日光市にある『渡邊佐平商店』を訪ねた。杜氏の小林昭彦さんは、一年中、晩酌を欠かさない。つまみに合わせて銘柄を変え、物語の世界に没頭して酒を飲む。酒の造りはオーソドックスだが、個性あふれる杜氏の晩酌の様子を伺ってきた。

2020年、栃木県『渡邊佐平商店』の杜氏に就任

【小林昭彦氏】

小林昭彦氏

1968年、栃木県生まれ。東京での大学在学中から飲食店で料理人として働く。栃木県内の日本酒蔵へ転職し、杜氏を経て2019年に渡邊佐平商店へ。翌年杜氏に就任。下野杜氏、南部杜氏、調理師の資格を持つ。特技はブレイクダンス。

泊まりの日は食堂で賄いを肴に一杯

「自宅でも、造りの期間に週4日ほどある蔵での泊まり込みの晩も、必ず日本酒を酌む」と杜氏は言った。

日光市の今市地区で180年以上酒造りを続ける渡邊佐平商店の杜氏・小林昭彦さんだ。近年、高品質な日本酒の産地として頭角を現した栃木県で、2006年に資格認証がスタートしたのが「下野杜氏」。小林さんはその制度を立ち上げた発起人のひとりでもある。同蔵の杜氏となってからは6回目の造り。

「奇をてらわずあくまでオーソドックスに。甘い、辛い、すっきり、濃醇、はっきりした風味になるように心がけています」と話す。

泊まりの日は、食堂で賄いを肴に一杯やる。この晩、食卓にはヤシオマスの押し寿司、湯葉と春菊のお浸し、味噌の上澄みで漬ける日光名物のたまり漬けなどが並んだ。ヤシオマスはニジマスを品種改良した栃木県の特産魚。小林さんはよく冷やした「日光誉」を合わせて、「酢飯にはやっぱりこれだな」と満面の笑み浮かべる。

ヤシオマスの押し寿司、春菊と湯葉のお浸し、ラッキョウのたまり漬けはいずれも酒との相性抜群。箸休めには水羊羹も

小林さんが来てから手掛ける生もと「尊徳」は、ぬる燗につけるのがお好み。米の旨みが膨らんだぬる燗とダシをたっぷり吸った日光名産の湯葉は、鉄板のタッグだ。

お燗は徳利型の千代香(ちょか)に入れて、ガスコンロの直火でつけるのが小林流

「同じ栃木県でも私は宇都宮市で生まれ育ち、また他の地域の蔵に長年勤めました。今市に来るまであまり食べませんでしたが、このたまり漬けは最高の酒の友です。それに、今市の人は大のあんこ好きで、伝統的にはおせちにも水羊羹が必ず入るそうです。水羊羹と日本酒、結構うまいもんですよ」

寒さの厳しい日光。凍てつく酒造りの日々はぬる燗で乗り切る
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学生時代は原宿のホコ天で踊った!...
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おとなの週末Web編集部
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