撮影/鵜澤昭彦 取材/カーツさとう
【和え麺風】蕎麦カフェ&バル BWCAFE(最寄駅:東新宿駅)
トマトを崩して混ぜて食べれば 酸味と蕎麦の香りが複雑に絡み合う
『蕎麦カフェ&バル BWCAFE』の「完熟焼きトマトの和え蕎麦」は、一度焼いた上で冷やしたトマトが丸ごと一個(!)蕎麦の上にのり、それを崩しながらいただく。バルサミコのコクとトマトの酸味が蕎麦と絡まるとき、口中にまさしく蕎麦の新風が吹く。17時からのバルタイムは、蕎麦同様に斬新な料理が揃い、ジックリ飲める。
【つけ麺風】蕎麦前酒場 CAZILO(最寄駅:下北沢駅)
ラーメンではマネできない!?エビがふわっと香るクリーミーなつけ麺
『蕎麦前酒場 CAZILO』は、北海道産蕎麦粉を使った二八のせいろから、鴨や有機野菜による和食の王道を押さえつつ、その和食にイタリアンテイストを加えた皿や、「タイ風カレーつけそば(1050円)」などのニュースタイルでも攻める!
そこに厳選された日本酒とワイン、平日は15時から深夜までの独特な営業時間。これは昼下がりから飲みだし、蕎麦で締めざるをえない。
【つけ麺風】SOBA STAND そばうさ(最寄駅:半蔵門駅)
つけ汁にくぐらせばバジルの風味が口中に広がる女性に人気の一杯
『SOBA STAND そばうさ』は昨今の蕎麦の革新が“辣油入り”から始まったとされるという、革新的土壌の立ち喰い蕎麦界で、今最も斬新な蕎麦を編み出しているといっていい店。『バジル冷そば』は、ジェノバソースのようなつけ汁にスクランブルエッグのトッピング!女性客がほぼ半数という立ち喰いそば店をはじめて見た。
【パスタ風】EBISU FRY BAR(最寄駅:恵比寿駅)
常識にとらわれない蕎麦が20品以上黄身に絡めるカルボナーラが美味!
『EBISU FRY BAR』はストレート&シンプルなざる蕎麦から、和・洋・中の様々な料理からインスパイアされた新機軸な蕎麦を冷・温含めて20品以上も提供する。だが、そのすべてに共通するのは、ベースにある十割蕎麦の香りとのどごし。また、従来のタネにとどまらないオリジナルな創作天ぷらも揃う。コースを注文すると〆のざる蕎麦はなんと食べ放題!
天使の海老とチリソースナッツ天ぷら 924円
天使の海老とは、天国に一番近い島ニューカレドニア産の極上ブラックタイガー
蕎麦切り、カレーに続く蕎麦進化第三章か!?
それは進化か革新か? はたまた時代が生んだ突然変異か?
今世紀初頭。東京は港区のある店で、蕎麦に突然、辣油が入った。それがパラダイムシフトだったかのように、現在に至るまで、蕎麦界には次々と新しい風が吹き続けている!!
中には、蕎麦自体が消し飛んでいるアイデア倒れのものもあったが「いけるね~」と蕎麦を手繰る手が止まらなかった皿は、大きくふたつのパターンに別れていた。
ひとつは中華料理からの触発。もうひとつがイタリア料理からのインスパイアだ。ただこれは自然な流れなのかもしれない。 なにしろ中華には麺、イタリアンにはパスタという似たような粉モノが存在している。
そもそもの蕎麦切りという麺の形状と製法も、中国の麺条の影響を受けて、それまでは蕎麦がきが主流だった日本の蕎麦の調理法が変化したものだ。
今のニュータイプ蕎麦を“邪道”という人もいるが、当時の蕎麦切りも“邪道”といわれていたかもしれない。
さらに、発端はうどんだったろうが、カレー南蛮蕎麦。日本の麺にカレーをかける発想は、当時、邪道感満載だったはずだ!
そういう意味で、蕎麦の新風は海外からの影響による進化、つまり蕎麦切り、カレー南蛮に続く第三章なのかもしれない。
そんな“未来の蕎麦切り”、“未来のカレー南蛮”を目指す熾烈な競争が今、日本では繰り広げられているのだ!
勝者は中華かイタリアか? いや麺類ならば東南アジア各国にもあるし、再度インドという可能性もあれば、何料理とも無縁な完全オリジナル蕎麦の登場だって待たれる。
さらに店内も今までの蕎麦屋とは一線を画す。“王将”なんて書かれたデッカイ将棋の駒が置いてある和風意匠は影も形もなく、『FRY BAR』や『CAZILO』はバル風だし、『BWCAFE』は完全にカフェ。『そばうさ』は、常にウエストコースト風BGMが流れてる。もうお琴のビートルズなんてワケわからんBGMは皆無!
嗚呼、蕎麦の新風、これから先、どんな風が吹くのか!?
ただしこれだけは言っておく。基本の蕎麦。これが旨くなければ、そんな風、すぐに止む。
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