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佐賀県唐津市と九州大学によるマサバの完全養殖プロジェクトがスタート。 養殖した成魚からとった卵をふ化させて再び育てる完全養殖に日本で初めて成功。 平成28年には「唐津Qサバ」と命名。日本初の「アルファベット系ブランドサバ」が誕生した。 そんな唐津で今、大ブレイクしているのが完全養殖のブランドサバ「唐津Qサバ」だ。

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凍ったままでサクサク美味しい 「唐津Qサバ冷やし竜田揚げ」

呼子のイカで有名な佐賀県唐津市。
そんな町で今、大ブレイクしているのが完全養殖のブランドサバ「唐津Qサバ」だ。

唐津Qサバ。
400g以上を出荷。市場への提供は毎年10月~翌6月ごろ。

唐津はそもそも、西日本有数のサバの水揚げがあった。
次第にその水揚げは減り、イカも漁獲量が不安定ななか、水産業の復興のきっかけとして唐津市と九州大学によるマサバの完全養殖プロジェクトがスタート。
養殖した成魚からとった卵をふ化させて再び育てる完全養殖に、日本で初めて成功した。

サバの完全養殖は、
育成、採卵や授精など
高度な技術が必要。

マサバ養殖に最適な環境を研究し、適切なタイミングで採卵。
ふ化させて、体長が7~9センチになったら海面いけすで養殖する。
サバは夏の暑さに弱く、いけすにぶつかると傷がつきやすい。
しかし、生産者による餌のやり方や扱いの工夫、その過程をデータ化し一年中安定した脂肪分のマサバを作り上げた。
平成28年には「唐津Qサバ」と命名。
これまた日本初の「アルファベット系ブランドサバ」が誕生した。

唐津Qサバのロゴ。
名前のインパクトも大きく、
数々のメディアで大きく取り上げられた。

唐津市内の旅館、ホテル、飲食店は、唐津Qサバを観光の目玉にと勢いづいた。
そして主な提供方法は、なんと「サバの活き造り」!
イカの活き造りで知られる呼子は、「活き造り発祥の地」という話もある。
尾頭付き、ピクピク動くサバはエッジがしっかりした食感、品のいい脂のりでいくらでも食べられる。
ジェンヌ的には、究極の「わんこサバ」だ。

唐津名物サバの活き造り。
お頭付きのサバを、ピクピク動くほどのフレッシュな状態でいただける。

その美味しさは評判をよび、福岡、東京へも進出。
いまやなんと香港でも提供されるようになった。
しかし、まだ課題があった。
「刺身で食べるのがバツグンに美味しいQサバは、販売の中心が活魚です」と語るのは唐津市役所 農林水産部水産課水産係の草場諒平さん。
「どうしても仕入れや食べられる環境に制限があります。より多くのお客様に食べていただくだめに長期保存が可能で、持ち運びやすい商品の開発が検討されていました」
Qサバのさらなる知名度アップ、需要拡大を目指すためにも、お土産やお取り寄せに対応できる商品作成のために、唐津市は商品化を前提に加工品を募集。
2020年6月に、応募作品の「品評会」が開催された。
そして大賞に輝いたのは、前代未聞の鯖グルメ!
「唐津Qサバの冷やし竜田揚げ」。

史上初、凍ったまま食べる鯖グルメ「唐津Qサバの冷やし竜田揚げ」。
審査員は「最高の味わい」「ビールにバツグンに合う」「発想が斬新」など大絶賛。

「冷凍のまま食べるとサクサクして美味しいんです」と説明する草場さん。
……冷凍???
竜田揚げ???
サクサク???
混乱するジェンヌ
そのうえ、開発を手掛けたのは魚とは無縁の「ステーキレストラン」!
しかし受賞後完成した商品は、10月に発売がスタートするなり大好評。
道の駅で完売、ネット通販でも飛ぶように売れて製造が追いつかないという。
これはぜひ開発者ご本人にお話を聞かねば!!
なんとも不思議なヒット商品を造り上げたのは、市内のステーキ専門店「キャラバン」オーナーシェフの河上彰範さん。

キャラバンの河上彰範さん(左)。
右は、峰 達郎唐津市長。

キャラバンは1979年に創業。
A5ランクの佐賀牛や伊万里牛を扱う、ミシュランの星を獲得したこともあるレストランだ。

最上級の佐賀牛、伊万里牛などを
河上さん自ら、鉄板で焼き上げる。

ホテルオークラやブランド牛専門レストランで経験を積んだ河上さんが、2代目として腕を振るう。
キャラバンのHPには佐賀牛・伊万里牛の特選ヒレ、サーロイン、シャトーブリアンなどの文字が並ぶ。
そしてQサバメニューは……
もちろん、ない。
日々、肉と対峙する河上さん、当然のごとくQサバの加工品募集を知るよしもなかった。
きっかけは「ツイッター」だった。
じつはいまキャラバンはアニメファンから国内外の一躍注目を浴びている。
佐賀を舞台とするアニメの「聖地巡礼」で唐津を訪れた人々のために、自身もアニメ好きの河上さんが店に専用の休憩スペースを設けるなどして交流を深めていた。
「アニメをきっかけに訪れた唐津を、自分のふるさとのように思ってくれているファンの方が、Qサバの加工品募集のことを知って『ぼくに作ってみてほしい』とツイッターに投稿していらっしゃったんです」
唐津愛いっぱいの河上さん。
唐津を盛り上げられることならやってみようじゃないか、と応募を決意。
脂のりがあって、旨みのある唐津Qサバの美味しさをいかした、手軽に「スナック感覚」で食べられる商品にできないか、と河上さんは考えた。
「大人にはお酒のつまみになって、子どもたちのおやつにもなって、しかも食べ歩きができる商品を考案しようと思いました」
アイデアはすぐ浮かんだ。
「ホテル勤務時代、揚げた魚を冷凍して、エスカベッシュなどのオードブル料理を作っていたんです」
当時、揚げたての魚を急速冷凍すると、旨みを感じやすくなる、ということに気づいた河上さんは、さまざまなテストを重ねていたのだという。「しかもサクサクして美味しいんですよ」
さらに、サバは竜田揚げにすることに決めた。
「サバの竜田揚げは、唐津の小学校給食でおなじみの料理なんです」と河上さん。
「かつて、唐津はくじらの水揚げが多く、その竜田揚げが給食の定番でした。時代が変わってサバを使うようになったんです」
味付けは、河上さんのお母さまが担当。
「うちの母の竜田揚げは絶品なんですよ!」と胸を張る河上さん。
Qサバの切り身をニンニクやしょうがを加えたしょうゆベースの特製ダレに漬け込む。
醤油は唐津のものを使用。
「旨みとコクがあって、少し甘めのしょうゆなんですが、これを使うととても美味しく仕上がるんです」(河上さん)
片栗粉と小麦粉をはたいてカラリと揚げたら、そしてすかさず急速冷凍。
「竜田揚げ、少し甘いしょうゆ味。唐津を離れたひとにも、サバとともに唐津を感じてもらえたらと思いました」(河上さん)
唐津愛がギュッとつまった、史上初の冷たいサバの竜田揚げのお味はいかに!?
商品はたしかに保冷袋入り。
たしかに「冷凍のまま食べられる」と書いてある。

保冷袋に入った、
唐津Qサバ冷やし竜田揚げ。

さらに「溶けても美味しい」!?
河上さんいわく「冷凍の状態と、溶けて常温になった状態の味の違いを楽しんでほしい」とのこと。
ともかく、まずは袋から開けてかじってみる。

確かに凍ってます。

えっ?
さ、サクサク!
「凍っている感」より、「サクサク感」しか感じないというミラクル!
そんな驚きの食感とともに、Qサバの旨みが口の中いっぱいに広がる。
こくまろな醤油ダレとの相性もぴったり。
ひとつ食べるとあとを引く美味しさで、食べだすと止まらない美味しさ!

サクサク感が楽しい、唐津Qサバ冷やし竜田揚げ。
ちなみに「お茶漬けにして食べるのもおすすめ」と河上さん。ジェンヌさんも試してみましたがQサバの旨みが染み出して、とっても美味しい! 「海苔茶漬け」にして、わさびをちょっと入れると最高っ!!

おっとおっと、常温も食べないと。
しばしがまん。
15分後、自然解凍完了の竜田揚げを食べてみる。
うわ。今度はふっくらして、「フリット」的な味わいに!またまた驚きの「温度による味変」。
しかも「ベタベタ」した油っぽい感じはゼロ!
これも、Qサバならではの、シュッとした軽やかな味わいの脂だからこそ。
しかも凍らせることで、よりQサバの旨み感じることができる。
余すことなくQサバのよさをいかしたサバらしい商品だ。
さらに、冷やし竜田揚げと同時に、品評会でアイデア賞を受賞した、「唐津Qサバの甘夏オイル漬け」も商品化、発売となった。

大望閣が開発した「唐津Qサバの甘夏オイル漬け」。

開発したのは「大望閣」。
活き造りなどのQサバ料理を提供、人気を博しているホテルだ。

大望閣人気の「唐津Qサバ×呼子活イカコース」。
鯖寿司も絶品!

Qサバの甘夏オイル漬けは、Qサバを地元・加唐島の塩、そして加部島の特産品である甘夏みかんの果汁などを使って締め、甘夏の皮やハーブ、オリーブオイルに漬けて仕上げた商品。
こちらも製造が追いつかないほどの大好評!

オリーブオイルにサバとともに漬かっている甘夏の皮も刻んで、
いっしょにいただくのがおすすめ。
パッケージもスタイリッシュで、お土産に好評。

極めて生に近いフレッシュなしめ鯖は、ほんのり甘夏の風味。
オリーブオイルに漬けてあるのに、驚くほどさわやか。
こちらもQサバのよさをいかした絶品だ。
そして一切れ食べると止まらない(涙)。

極めて刺身に近い食感! ワインにもぴったり。

どちらもQサバの刺身同様、「わんこサバ」状態。
おうちでぜひ、目いっぱい「止まらないQサバタイム」を!

■唐津Qサバ
https://www.city.karatsu.lg.jp/suisan/kasseikacenter/kanzenyousyokumasaba.html
■キャラバン
https://ca1979.com/
■大望閣
http://www.taiboukaku.com/
※商品は各店舗のHP、道の駅「桃山天下市」などで販売中。

池田陽子(いけだ ようこ)
サバファンの集い「鯖ナイト」や、日本中のサバ好きが集まる「鯖サミット」などの活動を担う「全さば連(全日本さば連合会)」広報担当/サバジェンヌとして活躍。本業は薬膳アテンダント/食文化ジャーナリスト。著書に『ゆる薬膳。』(日本文芸社)、『缶詰deゆる薬膳。』(宝島社)、『春夏秋冬ゆる薬膳。』(扶桑社)、「ゆる薬膳。」はじめたらするっと5kgヤセました!(青春出版社)、『サバが好き!』(山と渓谷社)など。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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池田 陽子
池田 陽子

池田 陽子

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