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歴史の長さと遊興的な文化度の高さから、多くの文人をひきつけてきた街・浅草。著名作家が活き活きと言葉にした老舗の魅力を、令和時代の今も追いかけることができる。小説・随筆の世界にたちまちトリップできる、名店5軒の味をご紹介。

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【池波正太郎の愛した店 1】天藤

浅草名物の真っ黒な天ぷらは 見た目を裏切る軽やかさ

天丼(2000円 お新香・お味噌汁付)
蓋からはみ出るブ厚さ!

創業は明治35年(1902)。エビ天、キス天、ナス天と、小柱・イカなどのかき揚げはとにかく真っ黒な見た目で、浅草で食べる天丼の王道スタイル。

しかし天藤の味は、驚くほどに軽やかだ。その秘密は、キリッと辛口の丼つゆにあり。つゆが甘すぎず重すぎず、天ぷらの香ばしさを上手く引き立て、想像以上に箸が進む。

浅草出身の作家・池波正太郎が残した随筆には、この天丼をたいらげる老女が登場し、「ああ、うまかった。また、寿命がすこし延びた」とつぶやく。
年を重ねていてもぺろりと完食でき、またどんどん食べたくなる……のも納得の味だ。

お店オススメのひと品 穴子(800円)
単品の天ぷらは、冷めにくい銅製皿で供される。ふわっとした身とカリッと揚がった骨、二種の食感が楽しい

揚げ油は太白ごま油を使用。
さっくり歯切れがいい衣の秘密は、粒子が細かい小麦粉にあり

[住所]東京都台東区浅草1-41-1
[電話]03-3841-5802
[営業時間]10時半~17時LO
[休日]月
[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅1番出口から徒歩6分

【池波正太郎の愛した店 2】駒形前川本店

隅田川を望む入れ込み座敷で 風情豊かに味わう

うな重(5184円 吸物・お新香・水菓子付)
震災でも戦争でも守り抜いた母ダレの味を継いでいる

約220年前、江戸後期・文化文政時代に始まった老舗のうなぎ専門店。『前川』の屋号のとおり、創業時は大川(江戸期の隅田川)に面し、お客も舟で通っていた。

関東大震災後に移った現在の地でも、横に隅田川が広がり、入れ込み式の座敷からゆったり眺めることができる。その風景は、祖父に連れられて『前川』へ来ていたという幼少期の池波正太郎も見つめていたに違いない。

うなぎは背開きで蒸してから、代々必ず十六ぺん焼き返す。醤油とみりんだけで作られた江戸前の辛口のタレが、うなぎの脂と混ざりなんともいえない香ばしさを醸し、旨さを引き立てる。

お店オススメのひと品
上・う巻(1296円)  下・白焼(3888円)
鰻のタレを加えた卵液で鰻を巻いたう巻きに、土佐醤油を付けていただく白焼き。どちらもさっぱりと楽しめる

[住所]東京都台東区駒形2-1-29
[電話]03-3841-6314
[営業時間]11時半~21時(20時半LO)
[休日]無休
[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅駒形口から徒歩3分

【永井荷風の愛した店】尾張屋

浅草を愛した荷風が 毎日通い続けた蕎麦

かしわ南ばん(1100円)
のど越しのよい細打ちの二八蕎麦を使用

「永井荷風先生は毎日同じ時間にいらして、同じ席に座り、いつも『かしわ南ばん』を頼んで召し上がっていたそうです」と語るのは、万延元年(1860)創業の尾張屋・6代目で修業中の田中秀典さん。

具は特注のごま油で炒めた鶏ムネ肉と、たっぷりのネギ。永井が一滴も残さず飲み干していたという蕎麦つゆのダシは、3キロ以上ものカツオ節を長時間火にかけてとっているもの。毎日食べても飽きのこないよう、前に出すぎない味を保ち続けているという。

地元のお客にも愛され続けている、滋養が体に行き渡るような一杯だ。

お店オススメのひと品 天ぷらそば(1600円)
丼からはみ出す大きなエビ天。
良質のごま油で揚げ、コクがありながらもさっぱりした衣でダシの風味と合う

[住所]東京都台東区浅草1-7-1
[電話]03-3845-4500
[営業時間]11時半~20時半LO
[休日]金
[交通]地下鉄銀座線ほか浅草駅1番出口から徒歩4分

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