月刊誌『おとなの週末』で好評連載中の「口福三昧(こうふくざんまい)」は、漫画家のラズウェル細木さんが、試行錯誤を繰り返しながら食を楽しむ様子を描いた漫画エッセイです。2021年6月には、連載をまとめた単行本『ラズウェル細木の漫画エッセイ グルメ宝島 美味しい食の探検へ』(講談社ビーシー/講談社)が刊行されました。単行本未収録の雑誌掲載作を『おとなの週末Web』で特別公開します。ラズウェルさんの“自作解説”とともに、お楽しみください。
画像ギャラリー「ほう仔飯は、香港の冬メニューなんです」
今回紹介する作品「ほう仔飯を作って香港気分に浸る」(『おとなの週末』2021年2月号掲載)は、タイトルからもうかがえるように、冬場の香港の名物です。「ほう仔飯(ほうしはん)」の「ほう」の漢字は、Webページでは正しく表示されない恐れがあるため、今回平仮名表記にしていますが、「保」の下に「火」と書きます。「ほう」には「土鍋で煮込む」という意味があるそうです。作品内でも説明されていますように、つまりは、「土鍋で作る炊き込みご飯」です。
ラズウェルさんは、この料理を取り上げた理由について、次のように語ってくれました。
「香港は大好きで毎年12月に行ってたんです。でも、香港がデモで騒がしくなってきて。2019年も行く予定だったんですけど、やめたんです。2020年はコロナがあって、それで行けなくて。ですから、香港の味を家で作ってみようと」
英国から中国への返還が1997年。ラズウェルさんはこの前にも、香港へは2度訪れたことがあり、訪問回数は10数回に上るといいます。
「ほう仔飯は、香港の冬メニューなんです。地元の人にとっては、寒い時期の季節メニューなんですね」
日本の炊き込みご飯とは少し違う点が
“炊き込みご飯“自体は、日本人にとってもおなじみです。しかし、ほう仔飯とは異なる部分があるとのこと。「日本の場合は、炊く前に味を付けるんです。でも、ほう仔飯は炊き上がってから調味料を回しかけ、それから混ぜるんです。だから、味が均一ではなくて、濃い部分と薄い部分とがまだらになります。これがいい味わいなんです」
作品の中では、「ほう仔飯」の調理に悪戦苦闘する様子が描かれています。例えば、土鍋での炊飯。焦げないように、慎重に火加減を調整します。本来ならインディカ米を用いますが、日本米をブレンドしてみるという“実験”も。広東風の腸詰めが入手できないため、代替の食材を試みています。
調理で最も気を付けたことは、「鍋の底が焦げ付かないように、火加減と焦げない時間を割り出すこと」。しかし、その苦労は報われます。最初の一口で見せたラズウェルさんの満面の笑みを、ぜひ、漫画でご確認ください。
『グルメ宝島』には連載20回分を収録
『おとなの週末』に連載中の「口福三昧」は、食通で知られる漫画家のラズウェル細木さんが、食の可能性を追求すべく、さまざまなグルメを味わったり、自身で調理したりした日々の体験について漫画と文章でつづった「漫画エッセイ」です。漫画と文章に加え、写真付きの「おつまみレシピ」も。食に関して幅広い知識が得られる盛りだくさんな内容で、人気を博しています。
単行本『グルメ宝島』には、『おとなの週末』2015年9月号~2017年5月号に掲載された「口福三昧」の中から20回分を選び、収録。冒頭では、「宅飲み・仲間飲みが3倍楽しくなる!簡単激旨レシピ」として、「コンビーフと厚揚げの赤ワイン煮」など、ラズウェルさんが厳選した絶品おつまみ7品をカラー写真で紹介しています。
ほかに、単行本オリジナルのコンテンツも掲載。「ここが美味しい食の研究所 ラズウェル細木の台所公開!」は、食の探究に余念がない著者の自宅台所を図解した貴重な内容です。
※現在は当時の状況と異なる場合があります。
ラズウェル細木
1956年生まれ、山形県米沢市出身。漫画で呑兵衛達の心をくすぐり続けて15年超。旨い食と酒を求めて庶民目線で描いた作品が人気を博している。代表作に『酒のほそ道』(日本文芸社)、『う』(講談社)、『大江戸酒道楽』(リイド社)、『ときめきジャズタイム』(ジャズ批評社)などがある。2012年、手塚治虫文化賞短編賞を受賞。2010年、米沢市観光大使に就任。現在は月刊誌『おとなの週末』(講談社ビーシー/講談社)で新しい食の美味を研究する「口福三昧」を連載中。
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