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環境問題を背景に世界的に電気自動車(EV)の普及が進んでいる。日本車では日産が販売台数で先行しているが、他メーカーも着々と準備を進めている。また輸入車もEVの日本導入に積極的だ。2024年3月に日本初の公道レースが開催されたが、そのマシンもEVだった。EVはそろそろ買い時なのだろうか?

マンションなど集合住宅でEVが購入しにくい理由

電気自動車用の充電設備を備えたマンションは少数の新築物件に限られる(viaduct_k@Adobe Stock)

電気自動車はエンジンを搭載しないため、走行段階では、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない。太陽光を始めとする再生可能エネルギーで発電された電気を使って走行すれば、二酸化炭素や各種の排出ガスをほとんど発生させずに車両を運行できる。

従って電気自動車は、環境性能の優れたカテゴリーとされるが、ユーザーによって親和性が大きく異なることに注意したい。

まず電気自動車はエンジンを搭載せず、充電された電気だけで走るため、自宅や勤務先に自由に使える充電設備が必要だ。公共施設などに設置された急速充電器も利用できるが、駆動用電池に対する負荷も大きい。その結果、急速充電器を使い続けると、駆動用電池が劣化して走行可能な距離が短くなりやすい。

新しい電気自動車は、温度管理を入念に行って、急速充電による劣化が以前に比べると少ない。それでも電気自動車の開発者は「駆動用電池の劣化を抑えるなら、急速充電専用にせず、200Vの普通充電も時々行って欲しい」という。

そうなるとマンションなどの集合住宅に住むユーザーは、電気自動車を所有しにくい。電気自動車用の充電設備を備えたマンションは少数の新築物件に限られ、自治会などの了解を得て追加設置するのも困難であるからだ。そして日本では、総世帯数の約40%、都市部では70~80%が集合住宅に住む。

ハイブリッドと比べるとまだまだ割高感のあるEV

日産リーフ

また電気自動車には、1回の充電で走行できる距離が短いという指摘もある。環境負荷を徹底的に抑えるなら、クルマの使用は買い物などの短距離移動に限り、遠方への外出には鉄道などの公共交通機関を使うのが好ましい。駅までクルマで出かけて鉄道に乗り替える「パーク&ライド」が理想だ。

しかし実際には、クルマを所有していれば、遠方まで出かけるニーズも生じる。その時に1回の充電で走行できる距離が、WLTCモードで250km以下だと、長距離移動では不安が生じる。予め充電施設を確認した上で出発する必要も生じるから、現実的には面倒だ。

さらに電気自動車は今のところ価格が高い。例えば日産リーフの買い得グレードとされるX・Vセレクションは431万8600円で、補助金交付額の85万円を差し引いても約347万円だ。リーフは電気自動車の中では買い得だが、ハイブリッドのトヨタプリウス2.0Gが320万円に収まることを考えると、割高感も生じる。

1回の充電で走れる距離も、リーフX・Vセレクションのリチウムイオン電池は総電力量が40kWhになり、WLTCモードで322kmだから十分ではない。

しかも電気自動車には、長く使うと駆動用電池の劣化で走行可能な距離が短くなりやすいから、数年後に売却する時の価値も下がり気味だ。いわゆるリセールバリューが低い。これらのさまざまな課題を解決できないと、電気自動車を好調に販売するのは難しい。

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セカンドカーに最適な軽自動車のEV「サクラ」が売れている...
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渡辺陽一郎
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