日本人のジャケット「きもの」を本に着せる
ブックカバーは日本独特の名称で、本来は「ブックジャケット」というのですが、日本人のジャケットは「きもの」ですものね。私は、本に「きもの」を着せたいのです。それも「手縫いのきもの」を。そんな本の「きもの」を作っているところが「伊豆のお針子無生庵」です。このたびの「おとなの週末Web」プレゼント企画を通して、皆様に少しでも知っていただけましたら光栄に思います。
私は、日本人が戦後の欧米化による生活様式の著しい変化の中で、日常着として身に着けなくなってしまった美しい着物の染織技術を、小さなブックカバーの世界で表現し、残していくことをライフワークとしています。
今回使用した西陣織は、博多織や佐賀錦などとともに日本を代表する絹織物。山名宋全(そうぜん。室町中期の武将、山名持豊の法名)が陣をはったことにちなんで呼ばれるようになった京都・西陣の先染め高級綾織物です。金糸、銀糸を織り込んだ華麗でゴージャスな織物であり、特に西陣織といえば絢爛豪華な帯を想像する人も多いほど、その存在感は抜群といえます。
西陣織をはじめ、そんな日本伝統の織物を素材に使い、「伊豆のお針子無生庵」では、手縫いで心を込めて丁寧に作っております。
もともと、ブックカバーは「書皮」(しょひ)といって大正時代の古書店がはしりだそうです。ですからその歴史は100年ほど。原点は包み紙としての役割から始まったということです。確かに「包む」という文化は、風呂敷にもみられるように、日本独特かもしれません。