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鮒寿司から早寿司へ

日本の鮨の始まりは琵琶湖の辺りで生まれた鮒(ふな)寿司だという説があります。炊いたご飯に塩漬けしたニゴロブナを漬け込んで熟成させた「熟(な)れ寿司」の一種で、ご飯は食べずに鮒だけ食べます。この鮒寿司がやがて鯖寿司のような押し寿司になっていったとか。

それから時代はずっと下って江戸前の握り寿司が登場します。昔から江戸っ子は気が短かったのでしょう。わかりやすくザックリ言えば、発酵だの熟成だのなんて七面倒臭いことは取っ払って、酢飯の上に酢で締めた魚を載っけて食べるようになったわけです。手間がはぶけた分、「早寿司」といういい方もされました。

魚を漬け込むにせよ、載せるにせよ、鮨を語るうえで大事な役どころを演じることになったのが「米」、つまり「シャリ」です。シャリっていうのはお釈迦様の遺骨である「舎利」からきていて、その形が米粒に似ていることから使われるようになったそうです。もちろんお釈迦様の遺骨なんて見たことありませんが、ものの本にはそう書かれています。

シャリは炊いたご飯に塩、砂糖、酢を加えて仕込むわけですが、それぞれの匙(さじ)加減でまったく違った味になります。シャリの味は店によって違い、その違いが店の味になるというわけです。

なかでも重要なのが酢。酢には「米酢」と「赤酢」があって、米酢は文字通り米から造った酢です。赤酢は酒粕だけを原料とした酢で、飴色をした香ばしい風味がします。当時の江戸前の寿司屋は赤酢を使っていました。話によれば、江戸時代や明治の初めの頃は米酢より酒粕から造る赤酢の方が安かったからだそうですよ。

(本文は、2012年6月15日刊『寿司屋の親父のひとり言』に加筆修正したものです)

お店は、成田山新勝寺の東京別院である深川不動堂の参道からちょっと路地をはいったところ。

すし 三ツ木

住所:東京都江東区富岡1‐13‐13
電話:03‐3641‐2863
営業時間:11時半~13時半、17時~22時
定休日:第3日曜日、月曜日
交通:東西線門前仲町駅1番出口から徒歩1分

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おとなの週末Web編集部 今井
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