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無名時代から輝きを放つ才能

横山剣は神崎まきに楽曲提供していた。「もう平気」、「振り向けば、あなた…」など良い曲を当時から書いていた。当時の彼は20代の半ば過ぎ。実は酒を飲まないのだが、夜の街をそぞろ歩くのは好きだった。深夜午前3時過ぎのスタジオ。ユーモアのセンス抜群の横山剣を突然のゲストとして出演させ、スタジオに笑い声が響いたのが懐かしい。クレイジーケンバンドとして再デビューするずっと前のことだ。

実は横山剣のことはその以前から知っていた。それは彼のプロとしてのキャリアのスタートとなるクールスRCを通してだった。プロデュースしたミュージシャンの少ないことで知られる山下達郎の大好きなバンドで、自ら『NEW YORK CITY,N.Y.』(1979年)をプロデュースしている。そのクールスはキング・レコードから1975年にデビューし、トリオ・レコード、ポリスター・レコード、山下達郎の設立したMOONレコードなどでアルバムを発表している。

クールスのメイン・プロデューサーであり、マネジメントも務めた増井淑博が友人だったので、ポリスター・レコード時代、アルバムのスーパーバイザーを務めたことがある。その時代、横山剣はクールスのローディー(スタッフ)だった。それで知っていたのだ。“クールスっていうのは凄いバンドなんですよ。自分なんかはそこに関われてすごく幸せだった”と横山剣は常々、語っている。ローディーからスタートした彼は、ついにクールスのリード・ヴォーカリストになる。彼の才能は無名の時代から輝きを放っていたのだ。

岩田由記夫

1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。

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