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『おとなの週末Web』では、グルメ情報をはじめ、旅や文化など週末や休日をより楽しんでいただけるようなコンテンツも発信しています。国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、とっておきの秘話を交えて、昭和・平成・令和の「音楽の達人たち」の実像に迫ります。1970年代に「柳ジョージ&レイニーウッド」を結成し、「雨に泣いてる…」などのヒットで熱狂的な人気を誇ったロック歌手でギタリストの柳ジョージ(1948~2011年)の最終回。“夜聴き”にぴったりな世界の曲を集めた『レイト・ナイト・テイルズ』シリーズが人気です。海外の有名ミュージシャンが案内人となり、オススメの楽曲を選ぶコンピレーションアルバム。今回は、日本から柳ジョージの原点とも言うべき曲が収録されました。

全米で人気のグループ「クルアンビン」が選んだ柳ジョージの代表曲

ポール・マッカートニーが2020年暮れに発表した新作『マッカートニーIII』。およそ半年後にこのアルバムに収められた楽曲をカヴァーしたり、リミックスしたアルバム『マッカートニーIII IMAGINED』が発売された。ポール自らがカヴァーやリミックスするミュージシャンの人選を行ったこのアルバムは、全米No.1となった

ポールが選んだ12組(配信は11組)のミュージシャンの中に、全米で人気の3人組、クルアンビンも含まれていた。そのクルアンビンが、自分たちが好きな夜向きの世界各地の曲をコンピレーションしたアルバム『レイト・ナイト・テイルズ』も2020年暮れに発売された作品。その中に柳ジョージの「『祭りばやしが聞こえる』のテーマ」(1977年)が含まれていて、良い曲には時代も国境も無いのだなと嬉しくなった

柳ジョージのアルバムの数々

サラリーマンから再びミュージシャンに戻るきっかけとなった名曲

柳ジョージは徳間ジャパン・レコードからワーナー・パイオニア(当時)にキャリアの途中で移籍している。条件面だけでなく、この移籍を本人はとても喜んでいた。それはレーベルがアトランティックだったからだ。

古いソウルが大好きだった柳ジョージは、敬愛するオーティス・レディング、アレサ・フランクリンなどソウル・レジェンドと同じレーベル・マークが、自分のアルバムにつくのは大変に名誉なことだと喜んでいた。

“自分は作った曲に対し、これがどうだとかあれがどうだというのは好きじゃないです。それなりにどの曲も愛着を持ってます”とよく言っていた。

オリジナルだけでなく古き良きスタンダードやソウル・ミュージックのカヴァー・アルバムもヒットさせていた。

その中のサム・クックの名曲「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は柳ジョージに欠かせない1曲だ。ゴールデン・カップス、パワーハウスを辞めた後、柳ジョージはしばらくサラリーマンをしていた。そんな彼が再び音楽シーンに戻るきっかけとなったのが、この曲だった。

1970年代中期、スタジオ・ミュージシャンが中心となって結成されたアルバトロスというグループがあった。そのアルバトロスのアルバムにゲストとして呼ばれた柳ジョージは「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」を熱唱した。それがきっかけで再び柳ジョージはミュージック・シーンに戻れたのだった。“変化は来る”と歌われるこの曲は、サム・クックが女性に射殺された後にヒットしたことで知られている。

ハスキーな歌声が魅力だった

“フェンスの向こうのアメリカ”に憧れた

柳ジョージは戦後の匂いがする横浜で生まれ育った。街中にフェンスがめぐらされ、その向こうにはアメリカ軍がいた。

“フェンスの向こうには、自分たちの信じられない世界があった。こんな国と戦争して勝てるつもりだったのかという気持ちとアメリカってすごいなぁ、いいなぁという自分がいましたね”

「FENCEの向こうのアメリカ」では、そんな柳ジョージの想いが歌われる。戦争に負けて原爆まで落とされたのに、アメリカに憧れてしまう。それは団塊の世代の複雑な感情でもあった。柳ジョージがこよなくアメリカ車を愛していたのもファンの間では知られていた。世が変わり、ドイツ車が人気となってもアメ車に乗り続けていた。

「FENCEの向こうのアメリカ」は石井清登の作曲、「『祭りばやしが聞こえる』のテーマ」は大野克夫の作曲だった。自分で曲を書く一方で、他人が書いた曲でも良ければ演奏する。それが柳ジョージのスタイルだった

「雨に泣いてる…」は、柳ジョージの作詞・作曲によるヒット曲だ。この曲から柳ジョージのルーツの大きなひとつであるブルーズが薫ってくる。ロックのルーツとなっているブルーズと日本人の感性が合体し、昇華された名曲だと思う。柳ジョージという男が、酒に逃れないと解放できない孤独を抱えていたことも伝わってくる。海外の“ブルーズ”と日本ならではの“ブルース~哀歌”が出逢ったような楽曲なのだ。

2011年10月10日、柳ジョージが63歳で逝って10年。命日が近づくと彼との会話、残した楽曲を思い出す

“泣きのギター”で多くのファンを魅了した

岩田由記夫

岩田由記夫

1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo」で、貴重なアナログ・レコードをLINNの約350万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。

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