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「司馬先生の本をもっと日本人は読むべきだと思う」ジョーさんは珍しく熱弁した 音楽の達人“秘話”・柳ジョージ(3)

「司馬先生の本をもっと日本人は読むべきだと思う」ジョーさんは珍しく熱弁した 音楽の達人“秘話”・柳ジョージ(3)

『おとなの週末Web』では、グルメ情報をはじめ、旅や文化など週末や休日をより楽しんでいただけるようなコンテンツも発信しています。国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、とっておきの秘話を交えて、昭和・平成・令和の「音楽の達人たち」の実像に迫ります。1970年代に「柳ジョージ&レイニーウッド」を結成し、「雨に泣いてる…」などのヒットで熱狂的な人気を誇ったロック歌手でギタリストの柳ジョージ(1948~2011年)の第3回。ファースト・アルバムが出来た時に、“ジョーさん”は国民作家・司馬遼太郎を訪ねます。その理由は……。

perm_media 《画像ギャラリー》「司馬先生の本をもっと日本人は読むべきだと思う」ジョーさんは珍しく熱弁した 音楽の達人“秘話”・柳ジョージ(3)の画像をチェック! navigate_next

“和製クラプトン”の呼称を嫌っていた

柳ジョージ~ジョーさんは“和製クラプトン”とよく言われた。しかし、本人はこの呼称を嫌っていた。ロックの黎明期からジョーさんは演奏していた。後期のゴールデン・カップスやパワーハウスというバンドでジョーさんはジャパニーズ・ロックに貢献したという秘かな自負があったのだと思う。

エリック・クラプトンは、ジョーさんにとって憧れの人ではなく同世代のミュージシャンだったのだ。だから、口にこそ出さなかったがエリック・クラプトンを似せたと言われるのは大変な屈辱だったのだ

ジョーさんには音楽と酒豪というイメージがあった。が、それだけでなく教養の人でもあった。ある時、ラジオのスタジオで映画の話になった。自宅で大画面のテレビで映画を観るのが大好きだと初めて知った。LD(レーザーディスク)が画質が良いと全盛の時代のことだ。ぼくも1000枚くらいLDを所持していたが、ジョーさんのコレクション枚数を訊いて驚いた。3000枚はコレクションしていると教えてくれた

“だけど、自分がそんなにLDをコレクションしていることは秘密にしといてくださいよ。なんか沢山持ってるって自慢するみたいで格好悪いから”

あらゆる映画を観ていたが、往年のハリウッド作品や日本の古い映画のファンだった。

柳ジョージのアルバムの数々

名曲「酔って候」を携え、司馬遼太郎の自宅へ

映画鑑賞と並ぶ趣味が読書だった。仕事が休みの日は映画を観てるか、本を読んでいると教えてくれた。とにかく人になにかをひけらかすのが嫌いな人だったので、小説家名もなかなか明かしてくれない。無理矢理問いただすとドストエフスキー、ヘミングウェイなどの名があがった。けれども一番好きなのは、吉川英治や司馬遼太郎のような小説家だと教えられた。とりわけ司馬遼太郎には深い思い入れがあった

“自分は一介のミュージシャンだから、世の中に対してどうのこうのと言わないけれど、司馬先生の本をもっと日本人は読むべきだと思う”とジョーさんには珍しく熱弁した。

“自分はね、ファースト・アルバムが出来あがった時に司馬先生のお宅へ伺ったんです。「酔って候」という曲は、司馬先生の小説と同じタイトルなんです。(幕末の土佐藩主)山内容堂を歌った曲なんだけど、このタイトルにするなら司馬先生に了解してもらわなければならないと思ったんですね。ツテをたどって自宅を捜しあて、伺ったんです。でもね、お宅へ向かう新幹線の中で、タイトルの了解を頂けなかったら、レコードはどうなるのだろうということは不思議になかった。憧れの司馬先生に逢えるということで頭の中が一杯だったな”

司馬遼太郎宅を訪れた柳ジョージは、心よく逢ってくれ、気さくに迎えた彼に心を打たれる。司馬は、ロックですか、なかなかいい曲ですねと言ってくれた。タイトルを使うのはほんとはよくないけど、わざわざ柳くんが出向いてくれたし、いいでしょうと快諾してくれたのだ

“最初のころはステージに上がるのも緊張したけど、司馬先生に逢う前の自分は、ガチガチだった。あんな温かい言葉をかけていただけると思ってもいなかったから”

ハスキーな歌声が魅力だった

筋を通す「昭和の男」

“酔って候”、確かに司馬遼太郎の作品だ。しかし、誰でも付けそうな曲名でもある。多分、ほとんどのミュージシャンは自分と同じ曲を先に付けた小説家や他のミュージシャンに了解はとらないと思う。実際、そういう例もある。けれども、律儀な性格のジョーさんには、タイトルの無断拝借という発想はまったくなかった。とにかく筋を通す。それが酔っていない時のジョーさんの生きざまだった

ジョーさんは日本大学の法学部をちゃんと卒業している。10代から音楽の虜になっていたし、大学紛争の時代でもあった。

“親と約束したんですよ。音楽やっても大学だけは出ておけと言われてた。大学時代、好きにさせてもらったんだから、せめて卒業するという約束を守ったんですね”

かくのごとく、ジョーさんは筋を通す昭和の男だった

“泣きのギター”で多くのファンを魅了した

岩田由記夫

岩田由記夫

1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo」で、貴重なアナログ・レコードをLINNの約350万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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