寝転んだジャガーを撮って、心の中で小躍り
今回展示された写真は、どれも迫力のあるものばかり。そして、野生動物との距離の近さに、驚きます。
「住民が狩りをするアマゾンと違い、パンタナールは、お尻をたたけそうな距離まで動物に寄れるんです」。確かに、写真展のメインビジュアルに選ばれた「ジャガー」の写真は、川べりでゴロンと仰向けに寝転んだ構図で、人間への警戒心があまりない様子が伝わってきます。
岩合さんはこのジャガーについて「あれは、恐らく、世界で僕しか撮っていないと思うんです。5m足らずのボートの上からだったんで、やったあ!と叫ぶと川の中に落ちちゃうんで(笑)。でも、心の中では小躍りしたいぐらいの気持ちでしたね」と、撮影時のエピソードを説明してくれました。
やはり、ジャガーが被写体として、特に惹かれたようです。挨拶後の質疑では、「ジャガーを見ると、シャッターを押してたんですね。もう要らないよと思う時でも、気が付くとシャッターを押していた。ジャガーが動くたびにシャッターを切っていたみたいな(笑)。ジャガーに会えない日は、カピバラを撮っていたり、源流の透明な水のところで魚を撮っていたり」と、ジャガーへの愛情をたっぷりと話してくれました。
野生の厳しさを伝える瞬間をとらえたものもありますが、多くの写真からは、野生動物の日常を楽しむ様子が伝わってきます。撮影では、野生動物に対して自身が危険を感じる状況にはならなかったそうです。
「パンタナールは、人生が変わるぐらいの衝撃を受ける場所。それを少しでも、この写真展で、野生の大自然を感じてもらえると、写真家冥利に尽きます」。こう岩合さんは、来場を呼びかけています。
文/堀晃和