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『未来少年コナン』は、巨匠・宮崎駿が初めて監督を務めたTVアニメーションです。NHKでの放送は1978(昭和53)年。当初から話題を集め、半世紀近く経った今も、世代を超えて多くの人を魅了しています。三鷹の森ジブリ美術館(東京都三鷹市)で5月28日から、その魅力を伝える企画展示「未来少年コナン展」が始まりました。日本のアニメーションの歴史にその名を刻む傑作を俯瞰する貴重な機会です。

最終戦争で絶滅の危機に瀕した地球を描く NHK初のアニメーション番組

『未来少年コナン』では、最終戦争でほとんどの人間が死んでしまった後の世界が描かれます。強力な超磁力兵器によって地表は荒廃し、地軸が狂って地震や大津波で文明が崩壊。物語は、その20年後、少年コナンと、おじいが暮らす孤島“のこされ島(じま)”から始まります。ある日、1人の少女ラナが島に流れ着き、自分たちの他にも人間が生き残っていたことを喜ぶコナンたち。しかし、科学都市インダストリアからの追手にラナを連れ去られてしまいます。ラナを救うため、コナンの大冒険が始まりました。

原作は、米作家アレグザンダー・ケイが1970年に発表したSF小説『残された人びと』。『未来少年コナン』は1978年4月4日から10月31日にかけ、全26話が毎週火曜夜に7時半からの30分枠で放送されました。NHKがテレビ開局25周年を記念した同局初のアニメーション番組でした。

コナンと大鮫の「ハナジロ」がお出迎え 

製作時、宮崎駿監督は37歳。「未来少年コナン展」の展示概要によると、「原作の全編に貫かれている暗いイメージには沿わず、原作を大幅に変えても良いという条件」で、初めての監督を引き受けたそうです。ちなみに、宮崎監督が『ルパン三世 カリオストロの城』で劇場長編デビューを果たすのは翌1979年のことです。

12歳の少年コナンの天真爛漫な性格と躍動感、背景の青い空と海…。観た誰もが“ワクワク、ドキドキ”して爽快な気分になる感覚は、宮崎監督ならではのスピード感あふれる演出の賜物でしょう。もちろん、作画監督を務めた伝説のアニメーター、大塚康生氏(『カリオストロの城』の作画監督)の存在も大きく影響しています。今回の企画展示は、そんな宮崎アニメの原点とも言うべき作品の魅力があますところなく伝わってくる充実の内容です。

『未来少年コナン展』の入り口 (c)NIPPON ANIMATION CO.,LTD. (c)Museo d’Arte Ghibli (c)Studio Ghibli

展示室の入り口で、来場者を迎えてくれるのは、第1話でコナンがしとめた大鮫「ハナジロ」のオブジェとコナンの絵。左手には、ブラウン管のテレビが置かれ、第1話のプロローグが映し出されています。現在の横長の画面とは異なり、当時のテレビは四角に近い4:3の比率でした。放送時の昭和の時代感を漂わせる粋な構成です。

会場に入ると、「宮崎駿監督流 漫画映画の特徴」と題し、『未来少年コナン』の魅力を、8つのポイントを挙げて解き明かした展示がありました。

宮崎駿監督流「漫画映画の特徴」をまとめた展示パネル。2つの展示室を通じて全26話のストーリーも紹介されている (c)NIPPON ANIMATION CO.,LTD. (c)Museo d’Arte Ghibli (c)Studio Ghibli

「キャラクターの魅力」「ドラマチック」「名セリフ」「SFらしからぬ乗り物の数々」「世界の構築」「よく動く」「ギャグとユーモア」「ありえないアクション」。この8つのテーマごとに、解説が付いています。例えば、「よく動く」には、「キャラクターたちは画面いっぱいに、とにかくよく動く。動きには必ず理由があり、結果、臨場感や躍動感がもたらされ、物語は紡がれていく」との説明が。どれも、なるほどと、腑に落ちてくる特徴です。

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おとなの週末Web編集部 堀
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