そもそも電気刺激とは?VRの研究分野でも注目
佐藤さんによると、電気刺激を提示した際に味を感じる「電気味覚」は、実は200年以上前に発見されて研究が進んでいます。
電気味覚計という味覚検査機器として医療応用されていましたが、近年では食事シーンでの味覚提示技術としてVR(バーチャルリアリティ)の研究分野でも注目され、国内外の大学を中心とする研究機関で研究されるようになってきました。
健康課題や環境課題を解決するフードテック
近年、食まわりで発生する環境や健康課題を解決すべくフードテック(食×テクノロジー)分野の進歩が著しいです。
植物由来の代替肉の登場もその一つ。家畜を食肉にするまでのプロセスは飼料を育てるだけでなく、その飼料を育てるために森林を伐採したり、水も大量に要します。家畜由来の肉の場合、私たちのもとに届けられるまで多くのエネルギーが使われているため、そのような環境負荷を減らそうというのが大きなねらいです。
味も「本物の肉」との違いが分からないレベルに届いている商品も多く、大手ファストフードチェーンや食品メーカーの商品数も増えています。
また、環境課題だけでなく、植物性たんぱく質を摂取できるという健康栄養面のメリットからも、新たなスタンダードになりつつあります。今回発表された箸形デバイスも、そう遠くない未来に減塩のスタンダードとなるのかもしれません。
厚生労働省が発表する国民健康・栄養調査(令和元年)によると、食塩摂取量は男女の平均値で1日あたり10.1g(男性10.9g、女性9.3g)です。
摂取量はここ10年間で減少傾向にあるものの、WHO(世界保健機関)が摂取目標に掲げる5gにはまだまだ遠いのが現状です。来年、不惑を迎える私も普段の食生活でできる範囲で減塩を意識しながら、箸型デバイスの登場を待ちたいと思います。
文/山本孟毅、写真提供/キリンホールディングス