一瞬を切り取って、永遠に残すこと
言葉には国境がある。字が読めない乳幼児もいる。
だけど、可愛い動物はその姿があれば、人を癒し、笑顔にしてくれる。場合によっては悶絶させる。実際、彼のユーチューブチャンネル(現在は長男が残された動画を編集して更新している)には、「可愛すぎて悶絶」「もふりたくて転げ回ってる」と言ったコメントが多数寄せられている。
可愛い動物の写真は、写真無双の彼にとって、無上のフィールドだったのだ。
そう、写真だ。
動画を配信することで、彼は多くの支持を得た。今でも、動画を上げるたび、多くの方が反応してくださる。様々な国の言葉で。中には、どんな言語かわからないものもある。長男も頑張って、英語のキャプションを工夫している。
父の言葉を思い出し、彼の遺志を曲げないように、細心の注意を払いつつ。
アザラシの赤ちゃんが氷の山からつるんと滑ったり、弾むように前進する動きは一つ一つ味わい深い。
だけど、彼が本当に賭けていたのは一瞬を切り取って、永遠に残すことだったと思っている。壁や机上に飾ったり、ポケットやバッグに忍ばせたりするための、忘れられない一瞬。
小原玲は、とことん、写真家だった。
小原玲(おはら・れい)
1961年、東京生まれ。茨城大学人文学部卒。写真週刊誌『フライデー』専属カメラマンを経て、フリーランスの報道写真家として国内外で活動。1989年の中国・天安門事件の写真は米グラフ誌『ライフ』に掲載され、「ザ・ベスト・オブ・ライフ」に選ばれた。1990年、アザラシの赤ちゃんをカナダで撮影したことを契機に動物写真家に転身。以後、マナティ、プレーリードッグ、シマエナガ、エゾモモンガなどを撮影。テレビ・雑誌・講演会のほかYouTubeに「アザラシの赤ちゃんch」を立ち上げるなど様々な分野で活躍した。写真集に『シマエナガちゃん』『もっとシマエナガちゃん』『ひなエナガちゃん』『アザラシの赤ちゃん』(いずれも講談社ビーシー/講談社)など。2021年11月17日、死去。享年60。
堀田あけみ(ほった・あけみ)
作家、椙山女学園大学国際コミュニケーション学部教授。1964年、愛知県生まれ。名古屋大学大学院教育学研究科(後期課程)単位取得後退学。81年、高校2年の時に小説「1980アイコ十六歳」で、第18回「文藝賞」を当時最年少の17歳で受賞。同作は映画やテレビドラマ化され、大きな話題に。以降、恋愛小説を中心に数多くの作品を発表し、若い世代の共感を集めてきた。作家活動とともに、大学で心理学の研究者の道を進み、2015年から現職。主な著書に、小説では『イノセントガール』『やさしい嘘が終わるまで』など、小説以外では『発達障害だって大丈夫 自閉症の子を育てる幸せ』『発達障害の君を信じてる 自閉症児、小学生になる』など。1995年、動物写真家の小原玲さんと結婚し、2男1女の母。
■カメラマン故小原玲 メモリアル写真展「モフモフ wa カワイイ」天国からの贈り物
期間:11月24日~30日(26日と27日は休館)
会場:セレモア紀尾井町本社セミナー会場(東京都千代田区紀尾井町3-12紀尾井町ビル6階)
時間:10時~17時
入場料:無料
【小原玲さんの関連グッズ】
動物写真家・小原玲さんが撮影したシマエナガやアザラシの赤ちゃんのカワイイ作品がプリントTシャツになった!(購入はコチラから)https://kodanshabc.base.ec/