東京から10時間、黄金崎不老ふ死温泉を目指す!
しばらく運転していると風ちゃんが俺に聞いてきた。
「親方~、一体どこへ行くんですかい?」
「えー、まだ3時間も運転してないんだけど! 本日は師匠の希望を取り入れて、マジマジの黄金伝説がある温泉! 青森県深浦の黄金崎(こがねざき)不老ふ死温泉に行くのことよ!」
「ゲッ! ゲゲゲのゲ!! これは驚き、たまげましたよ。青森とは、思いもよりませんでした。まったく意表をつく遠さでやんすね」
「でも師匠がお宝、お宝、言うからさぁ。希望に沿ってみたんだけどな。しかも当然源泉掛け流しであるぞよ !!(温度の関係で加水あり)」
「拙、確かに言いましたよ! すみませんでした!」
「わかればよろしい」
「毒食えば皿まででやんすが、流石に少々遠いざんすね。ちなみに何時間ぐらいかかるでやんすか~? 深浦まで」
「そうだなぁ、東京から車で10時間ぐらいかな」
「…………(無言)」
「芸の道も厳しく、熱く、しかも遠い道のりでやんすが、深浦までの道のりもなかなかなもんですな(笑)」
「わかってるじゃん」
「でも行けばわかるけど、あの辺りは世界遺産の白神山地も大変近いし、本当に素晴らしいところだよ」
「ほ~っ。白神山地ですか。青池って素晴らしいところがあるっていう話じゃないですか? 拙、一度行って見たかったんですよ……(笑)」
「しかし、遠いのは良いにしても、親方~、不老ふ死温泉の不老ふ死はどこからきてるんでやんすか?」
「風ちゃん、深浦周辺は徐福伝説があるんだ!」
「へ~! こりゃまた」
「徐福といえば、元は始皇帝に滅ぼされた斉の国の皇太子で、博識の学者だった人でやんすね」と風ちゃん。
「そう、頭脳を見込まれて始皇帝のそばに仕えていた人物だよ」
(中国の歴史書『史記』の記載だと、始皇帝に『東方の三神山に不老不死の霊薬がある』と進言して、始皇帝の命令で3000人の童男童女と多くの技術者を従えて大船団を組み、東方に船出してそのまま帰ってこなかったと書かれているらしい)
「まあ、日本に不老不死の薬を探しにきた有名人だよ」と俺。
「徐福伝説は確かに日本各地に点在しやすよね。鹿児島県、佐賀県、京都の伊根とか、山口、広島、愛知、三重、和歌山、静岡、山梨、秋田、etc.本当に日本各所に。まぁ、本当に船団組んできたとしても、昔のことだからバラバラになっちゃったんでしょうね」
「うん、そうだよな」
「あるいは、いろんな時代の話が混ざってひとつの伝説になっている可能性もあるかもですな」
「さすが、無駄に博識! しかも推理が冴えてるね」
「うるさいでやっんす」