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新宿に今も残る“昭和の喧騒”

西口には高層ビル。そして喧騒とどこかワイルドな男の匂い。昭和の新宿っちゃあ、子ども心にもどこかそんな大人の街っていうイメージだったわけだ。なんつーか、ハードボイルド。

で、そんな気分を纏いながら、朝一番で足を運んだのは『新宿らんぶる』だ。店名には“名曲・喫茶”と冠が付く。ご存知かどうか、昭和には「名曲喫茶」なるジャンルがあった。リクエストも受け、クラシックレコードを聴かせてくれる。らんぶると言えば中でも……という喫茶店。今はリクエストはないけど、その空間の雰囲気もメニューも往年のそれ。ううむ、煎りの深いコーヒーは大人の味だ。

となれば昼飯はここ、アルタの裏手に変わらず佇む『アカシア』。木造のなんとも品のある外観からして楽しみながら店内へ。どっかオシャレなんだよな、洋食。開店は昭和38年。で、注文はもちろん、看板メニューのロールキャベツシチューだ。コトコと煮込まれた先代おばあちゃんの味があったけえ。

さて、日も暮れなずんだら、コートの襟を立て夜の部へ突入。口開けには『サントリーラウンジ イーグル』へ。豪奢なシャンデリア、堅木のカウンターで背筋を伸ばす。男たちはここでトリハイ(トリスハイボールね)を飲んでたんだろうなあ。コロナで一時は閉店も囁かれたが復活。よかった。マスターの作る季節のフルーツカクテルも健在。

お次は三丁目に河岸を変え、向かうは酒場『どん底』。店名はゴーリキーの戯曲に由来するわけだが、そもそもそのアングラ感がいいじゃん。演劇人はもとより作家、音楽家……多くの著名人が足を運んだという店内は、やや暗めの照明とも相まってどこか隠れ家めき、落ち着く。厚切りのチャーシューをつまみに、“どんカク”を飲む。

そして最後は西口の『バガボンド』へハシゴしよう。バガボンド=放浪者。やはり店名がいちいちニクい。創業者の松岡さんが世界中を旅してこんな店を開きたいと願った酒場は、不思議な異国情緒がある。壁には氏がパリで出会った画家、平賀敬の絵画。生のジャズピアノを聴きながら本日は菊正宗のお燗をやろうじゃないか。新宿には今もあの頃の喧騒が生きている。

【はみだし 昭和な新宿】

『新宿の目』

新宿スバルビルの地下1階にある、彫刻家の宮下芳子さんが昭和44年に製作した作品。新宿西口から都庁の方向へ進むと見える。

『新宿の目』

撮影/西崎進也、取材/池田一郎

※2022年2月号発売時点の情報です。

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※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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