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長く愛され続ける老舗が多い中、研鑽を重ね、ついに辿り着いた自身の味で勝負しようと、若き店主達がおいしい城を築き上げた。常連になること必至、期待の新店をご紹介します。

2021年11月OPEN『浅草 ひら山』 @田原町

蕎麦もつまみも群を抜く旨さに感服

「おすすめは特にありません。蕎麦も一品料理も天ぷらも、全てに力を注いでいるから」と話すのが店主の平山さん。言うは易し、とはこの店の味を知れば決して思わないだろう。

ニシンの煮物は舌の上でほどけるほどふっくらで、身を何層にも重ねた穴子の煮こごりは深い旨みに満ちている。薄衣で揚げた天ぷらだって専門店も顔負けの出来栄えだ。そんな蕎麦前たちによって気分が十分高揚したところにやってきたのがご覧の美しきせいろ。

【冷】せいろ 1000円

『浅草 ひら山』【冷】せいろ 1000円 ツユはカツオ節と昆布に椎茸のダシを重ねて分厚い旨みを出す

店主が都内の名店を食べ歩いて心を決めたという両国の「ほそ川」で学んだ蕎麦は、コリっと小気味良いコシの後から噛むほどに甘みと香りが膨らんでくる。醤油のキレを感じるツユがこれまた粋だ。浅草のはずれでひっそりと産声をあげた同店が、都内の名店のひとつに数えられる日もそう遠くない。

『浅草 ひら山』

[住所]東京都台東区西浅草1-3-14
[電話]03-5830-6857
[営業時間]11時半〜14時半(14時LO)、17時〜21時
[休日]月・火(不定休)
[交通]地下鉄銀座線田原町駅エレベーター口から徒歩2分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトあり[予約制])、年始は未定

2022年6月OPEN『深川 玄庵』 @門前仲町

ご当地蕎麦の素朴な味に癒される

品書きを眺めていて「おっ」と思った。なぜなら東京で出す店は少ない山陰の郷土蕎麦、割子と釜あげがあるではないか。粗く手挽きした北海道産の粉をブレンドしたやや平打ちの田舎蕎麦は、野趣にあふれた素朴な味わい。一方、せいろやかけに使うのは江戸前の二八蕎麦で、こちらは啜り心地もなめらかな粋な風情だ。

【温】釜あげそば 950円

『深川 玄庵』【温】釜あげそば 950円 ツユを丼に流し入れ、好みの濃さにして汁ごと食す

これらを打つのが米子出身の店主・井田さん。地元や都内で営んでいた店を人に任せつつ、自身は蕎麦の道へと踏み入れた。まだまだ経験は浅い、と謙遜するけれど長年和食で磨いた手仕事のセンスは均一に揃った麺の美しさに表れている。

もちろんつまみも優秀で、ダシ巻や天ぷらといった定番もの以外にも、ガレットや細巻き寿司など、ひとひねり効かせた料理も揃えてもてなしてくれる。

『深川 玄庵』

[住所]東京都江東区深川2-13-1
[電話]03-6280-3807
[営業時間]11時半~14時半、17時~21時半(21時LO)
[休日]月
[交通]地下鉄東西線ほか門前仲町駅6番出口から徒歩5分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトなし)、年始は3日(16時)〜

2022年6月OPEN『そば処 一鬼』 @沼袋

気軽に楽しめる石臼挽きの十割蕎麦

知らなければきっと通り過ぎてしまうに違いない、小さな間口の扉を開ければカウンターのみのこぢんまりとした店内。立ち食いの店かと思いきや、ふと奥を見れば立派な石臼が置かれていた。

「師匠の味に出合って蕎麦を一生の仕事にしようと決めました」と語るのが川村さん。その師匠というのが、西荻窪の名店「鞍馬」のご主人だ。蕎麦は味を受け継いで、石臼挽きの微粉で打ったしなやかな十割だ。

【温】かけ 800円

『そば処 一鬼』【温】かけ 800円 湯気と共に力強いアゴダシの風味が立ち上る

一方のツユは独自の個性を出している。下関出身という川村さんが慣れ親しんだ味をベースに、かけ汁はアゴダシの風味を立たせ、もり汁も醤油が勝ちすぎないあっさりとした味わいだ。

現在はオープンしたばかりのため、蕎麦もつまみも少数精鋭。これからの成長も楽しみに応援したくなる1軒だ。

『そば処 一鬼』

[住所]東京都中野区沼袋3-5-2
[電話]050-1314-5514
[営業時間]11時半~16時半(16時LO)
[休日]木
[交通]西武新宿線沼袋駅南口から徒歩1分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトなし)、年始は6日〜

2022年4月OPEN『蕎麦 やましん』 @千歳烏山

センス光るつまみと正統派の蕎麦

店内は木目調の洋風な設えで、BGMはゆる~いハワイアン。ここはカフェかビストロか……。と思えば、出てきた蕎麦は折り目正しい漆塗りのせいろに盛られた老舗のそれを思わせる姿。一体どんな店?

フツフツ興味がわいてきた。訊けば店主の山下さんは元CMの制作チーフで「築地さらしなの里」の門を叩いて蕎麦の道へ。独立が見えてきた頃合いには、鮮魚店にも弟子入りして魚の扱いも覚えつつ、居酒屋でも働いて調理と接客のあれこれも身につけた。上質な刺身や遊び心あふれるつまみが品書きに並ぶのはそれゆえだ。

【温】ぞうにそば 1180円

『蕎麦 やましん』【温】ぞうにそば 1180円 サバ節でダシを引いたツユは香りもコクも力強い。揚げ餅が2個乗ってボリューム満点

とは言え、むろん主役は蕎麦。するりとのど越しの良い二八にどっしりと厚みのあるツユが寄り添い、これぞ江戸前のど真ん中。何とも面白い店の登場に蕎麦好き達も沸いている。

『蕎麦 やましん』

[住所]東京都世田谷区粕谷4-20-18-107
[電話]03-6750-2948
[営業時間]11時半~22時(21時LO)
[休日]木(他に月2回不定休あり)
[交通]京王線千歳烏山駅南口から徒歩5分
※年末は31日まで営業(年越し蕎麦のテイクアウトあり)、年始は6日〜(15時まで)

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おとなの週末Web編集部
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