ティモンディ前田裕太の“おとな”入門

【ティモンディ前田裕太の“おとな”入門】第25回 「旅」編(1)忙しない日常を忘れる、ふらり横浜の旅

ティモンディ前田裕太

旅先で見つけた新しい感情 すっかり胃袋が満ちた私は、中華街を見終わった後も腹ごなしに歩くことにした。 天気もよく気持ち良かったので、あてもなくふらふら歩いていると、山下公園に出る。 特に他に目的もないので、山下公園へ侵入…

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お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代に突入した前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう!
今回から、「旅」編が始まります!ロケなどで地方に行くことも多い前田さん。どんなエピソードが飛び出すか楽しみですね。まずは、休日にふらりと日帰りで出かけた、横浜の旅のお話です。

「ふらりと遠出」という大人の旅行

普段、休みの日があるとネタを書きに喫茶店に籠ったり執筆をしたりして、なかなか外に出ることがない。

趣味が読書だったりするので、インドアに拍車をかけてしまっている節があるのだけれど、意識的に身体を動かしたりしないと、永遠に同じ作業をして歳をとってしまいそうで怖くなる時がある。

そんな時は、コラムの締め切りだってあるのだけれど、思い切って日帰りでふらっと旅行に行ったりする。

しなければいけないことは山ほどあるので、インプットがなければ魅力的な文章が書けない、これは自身の成長のために必要な工程なんだ、と自分に言い聞かせて、この間は横浜へ何の計画も立てずに旅に出かけた。

気晴らしをしたいだけなのだけれど、たまにの息抜きくらいは許容してもらいたい。

横浜駅に到着すると、平日の15時だというのに人が溢れかえっていた。

外国から観光に来たバケーション組もチラホラ見受けられるけれど、やはりカップルが多い。休みを合わせて横浜デート、いいじゃないか、と通りゆくカップルたちを親戚の叔父さんのような目で微笑ましく見ていた。

自分が大人になったな、と思うのは、遠出をするのに、細かく計画をせずふらっと鞄1つで行けるようになったことにある。

まずは中華街を満喫!

今回も、財布と携帯だけ持って横浜へ行った。

一眼レフのカメラがあるので、それを持っていけば良かったと、それだけが唯一の後悔。

気が向いた時に好きな場所へ行くという選択肢は学生時代には無かったけれど、思い切って無計画に自由気まま旅行している自分を俯瞰して見た時には大人になったなあと思う。

実際、横浜に着いた時には何をするとか全く決めていなかった。

けれど、やはり全国でも有数の港町なだけあって、横浜は見どころが多くある繁華街だ。

元町・中華街という、もう中華街が駅名になっている駅を降りると、目の前にすぐ中華街の入り口と、とんでもなくデカい中華街の門が構えている。

特にお腹が空いている訳ではないけれど、せっかく来たし、と思って中華街を歩くことにした。

すると、大きく”世界一の中華まん”と看板に書いてある店を見つけた。

そんなものを目にしてしまえば「どれ、世界一の味がどれほどのものなのか、試してやろう」と思うのが人間の性というものだろう。

気がつけば、まんまと彼らの術中にハマって中華まんを手にしていた。してやられた。

中華まんで懲りたはずなのだけれど、看板の文字にやられて、気がつくと焼き栗やらスイーツなどを買って食べてしまっていた。

腹ペコでもなかったというのに、これが中華街の魔力というものなのだろうか。

もしかすると自分が食いしん坊なだけなのかもしれないが。

旅先で見つけた新しい感情

すっかり胃袋が満ちた私は、中華街を見終わった後も腹ごなしに歩くことにした。

天気もよく気持ち良かったので、あてもなくふらふら歩いていると、山下公園に出る。

特に他に目的もないので、山下公園へ侵入して、ベンチに座わり、ぼーっとしてみる。

気持ちがいい。

幼少期には、公園でベンチに座ってぼーっとしている大人を見て「なんだあいつ。特に遊ぶこともせずにただ座っていて気味悪いな」と思っていたけれど、この歳になると、座って景色を眺めているだけでも充分に気持ちが満ちる。当時の大人の気持ちがわかった。

適度に緑が目に入るし、海の眺めも良い。

普段コンクリートで作られた物ばかりを目にしているからなのか、単に心が疲れているからなのか定かではないけれど、癒されるなあ、と実感する。

少し離れたベンチに、私と同じようにベンチに腰掛けている老いた男性が目に入った。その人も、特に何をする訳でもなく、景色を見つめていた。

何だか、40年後の自分を見ているような気持ちになった。

ふと、私が彼のような年になっても山下公園のこの光景が残っていたらいいな、と思う。

ちょっとでもこの景色を保てるように、普段では気にもしなかったのに、急に足元に落ちているゴミを拾ったりしてみた。

忙しない日常の中では思いもしなかった感情と出会えたので、もう横浜での旅は成功だと言えよう。

この時期は日が落ちるのも早いので、どれくらい座っていたか分からないけれど、あっという間に太陽が沈むまで見届けてしまった。

30歳になって、公園に座っているだけで充実した時間を過ごせるようになったと実感した、そんな自分を発見できたいい旅だった。

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。

ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約28万人。

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