メイドイン島根がアツい! ワイン、クラフトビール、日本酒造りの現場で実力の高さに酔いしれる

日本全国さまざまな酒どころがありますが、今回ご紹介するのは、島根県。しかも、ワイナリー、クラフトビールのマイクロブリュワリー、日本酒の酒蔵とさまざまなジャンルを有しています。ライター・カーツさとうがそれらを巡り、飲んできました。

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この前、素晴らしい旅をしてまいりました! どこに行ったかというと、島根県ですよ、島根県!!

「あ、あの島根と鳥取、どっちが西でどっちが東か、よくわかんなくなるトコ?」

未だそんなことを言ってる方もいるかもしれませんが、そんな方にこそ知っていただきたい。それが、島根は「酒もメシもとんでもなく旨い」という感嘆すべき事実だ!!

ということで、島根で味わった、その「とんでもなく旨い酒」。今回、ワイナリー、マイクロブリュワリー、そして酒蔵を巡らせてもらった。つまり、贅沢にもワイン、クラフトビールに日本酒と3種のお酒造りの現場に行かせていただいたのでした。

フランスワインかと紛うほどの出来の良さ『島根ワイナリー』

まずはワイナリーから『島根ワイナリー』。見学無料のワイン醸造所のみならず、飲食施設も充実した巨大駐車場完備の一大ワイナリーだ。

『島根ワイナリー』

施設内の『試飲即売館バッカス』 では、ワイン購入はもちろん、数種のワインが無料試飲できるコーナーもありますが、『おとなの週末Web』読者ならばぜひ足を運んでいただきたいのが、無料試飲できないプレミアムなワインが有料で味わえる『ワインバル バッカス』

『ワインバル バッカス』

ここで飲んだのが、「清酒酵母仕込 甲州(白)」(グラス300円)と『葡萄神話メルロ(赤)」(グラス300円)。

「清酒酵母仕込 甲州(白)」(左)、「葡萄神話メルロ(赤)」(右)

なんと日本酒用の酵母で低温発酵させた「清酒酵母仕込 甲州(白)」。甲州種のぶどうを使用した
ワインといえば、シュールリー製法が有名だけど、それとも違う、たしかに日本酒にも似たブーケが
ほのかに感じられる
、日本料理に合いそうなワイン。

そして「葡萄神話メルロ(赤)」で驚いた。これ、なにも知らないで飲んだら「ポムロールですかね……」って思いますよ。そのくらいメルロ種ならではの熟したベリーのような特徴がしっかり味わえる

これ飲んだら、ここで一番お値段のお高い「横田カベルネ・ソーヴィニヨン2017」(グラス600円)はどれだけ驚かせてくれるんだ? と思った瞬間、オーダーしちゃいました。なにしろボトルだと5800円のワインですからね。それがグラスで600円って、そうとうお得ですよ。

いや〜ビックリした。収穫年が2017ってことは、もう5年経ってるのに、まだまだ熟成させた方が
旨くなるに違いないシッカリしたタンニンのある完全な長期熟成タイプ

ひと口目、ふた口目とどんどん開いていくのもわかる、完全にメドックはポイヤックあたりのシャトーワインと互角の奥深い飲み応え。できれば5年後に飲みたい!! こんな高いレベルなワインが造られてるんだなぁ島根。

「横田カベルネ・ソーヴィニヨン2017」。この濃厚なクラレットの色合いだけで、その実力が推し
量られる!

ほんと、島根にワインのイメージが全然なかったんですが、この「島根ワイナリー」、日本のボルドーかと思いましたよ

商品はもちろんサイトから購入することもできますが、今チェックしたら『横田カベルネ・ソーヴィニヨン2017』は残念ながら売り切れ。オレ、2018が出たら買います。それで家で5年以上寝かせて飲みます! もう決めてんの、それは。

銘菓を使ったクラフトビールも醸造『大根島醸造所』

続きまして、クラフトビールをメインにどぶろくにリキュールなども醸造しているブリュワリー『大根島醸造所』だ!

『大根島醸造所』

クラフトビールといえば、なんといってもエールやスタウト。それにフルーツやチョコを原材料に混ぜたフレーバー系ビールが一般的。もちろんそういったビールも通年商品として醸造している。

『大根島醸造所』のクラフトビール

ビールは写真左から、「FULL THROTTLE IPA」「SMASH IPA」「AMERICAN HONEY WHEAT」「LIGHT RICE LAGER」「大根島産 松江安納芋ブラウンエール」「美保関町産 松江えびすみかんエール」「島根町産 松江いちじくヴァイツェン」(各1本610円)。

大根島醸造所と同敷地内の ファミリーマートで購入可。またホームページからも購入できる。

しかし、そういったクラフトビールとは一線を画したどころか、二線も三線も画したようなビールを造っていた。それが「どじょう掬いまんじゅうエール」だ。

いきなりこの商品名を聞いたとき「え? なに」って思ったもん。醸造所の代表・門脇淳平氏に商品について、いろいろ説明していただいたんですが、あのコミカルな踊り「どじょうすくい」が島根発祥なのは知っていたので、郷土色出すために商品名に「どじょうすくい」って単語を入れたのだと最初は思った。

しかし、よくよく聞いて見れば、島根には『どじょう掬いまんじゅう』という山陰地方を代表する大ヒット銘菓があり、それを原材料の一部として使ったビールだっていうんですよ!

島根のデパートや土産物店なら、どこにでも置いてあるといっていい『どじょう掬いまんじゅう』。これが入ってるビールって……

それを「きわもの?」と思うなかれ。聞けば『どじょう掬いまんじゅう』は、規格外品が出たとき、今までは店頭試食に利用していたが、コロナ禍でそれができなくなり、廃棄するならばビールに活用できないか? という「SDGs」的な側面もあるのだ。

それだけじゃない。「饅頭の餡の糖分、皮の原料である小麦もビール発酵に適している」と門脇代表。たしかにそうだよ〜。

とんでもない醸造家だぜ、大根島醸造所・門脇淳平代表

これはどんな味が興味津々! と思ったが、オレ、ビールに関しては本当に詳しくない。そこで、『おとなの週末』編集部のクラフトビール担当のクラフトビールマニア・戎さんにお土産に買って感想を聞いてみた。

ここで写真初登場です。一番左が噂の『どじょう掬いまんじゅうエール』! 編集部にて飲ませていただきました。ちなみにお土産に一本だけというのも、申し訳ないんで『FULL THROTTLE IPA』に、戎(えびす)という名字に敬意を表して『松江えびすみかんエール』もお土産に

どうですか、戎さん?

「まず『FULL THROTTLE IPA』はIPAとして、『松江えびすみかんエール』はフルーツ系ビールとして、極めて正統派。安心できる味わい。一転! 『どじょう掬いまんじゅうエール』は、やっぱりすごいインパクト!

といいますと?

「ベルジャン酵母を使っているので、ちょっとベルギーの白ビールのような風味を感じさせます。それとバナナっぽい味わいもある。それよりなにより後味が普通のビールと確実に違う。あの〜、どじょう掬い饅頭の餡って、もしや白餡じゃない?

そうそう白餡!! 

「やっぱり! ほのかに白餡のような風味が残るんですよ。それが個性的でたまらない。いやぁすごい。クラフトビールの無限の可能性を感じさせてくれる、まさに唯一無二のクラフトビール!」

『大根島醸造所』、ますますトンがったクラフトビールを期待しております!!

ひとひねりあるお酒に心奪われる『李白酒造』

さて、ラストを飾るのは日本酒の酒蔵。松江市内の『李白酒造』

実はワタクシ、この酒蔵にうかがう前。すでにこちらの日本酒を島根で飲んでおります。だって前泊した旅館の夕食のドリンクメニューにあったんだもん。そりゃ飲むでしょうよ。

夕食時にいただきました「李白 特別純米 やまたのおろち 超辛口」

これが“超辛口”っていうだけあって、カミソリのようにシャープな喉ごしと、ただ鋭いだけじゃない馥郁とした米の味わいを感じさせる、思わず「旨ッ、プハー!」って声に出ちゃうような銘酒でして、もう旅館の部屋に戻ってからも、酒蔵に行けることでワクワクしちゃいましてね。

ワクワクしてたら、飲み足らなくなっちゃて、旅館の前のコンビニがあるんで、ブラブラ行ったらそこに売ってるんですよ『李白酒造』の別のお酒が。で、買ってひとりで部屋でまた飲みだしちゃった。

部屋でひとりで味わいました、「李白 特別純米酒」。ツマミはコンビニで買ったピーナッツです

この特別純米がまた、コックリとした力強さがあるのにクイックイッいけちゃうの。すでに酒蔵行く前から、いい気分で『李白酒造』の虜よ。そんな状態でうかがいました『李白酒造』。

『李白酒造』

『李白酒造』は国内消費だけではなく、海外輸出にも力を入れている酒蔵。先代の4代目社長が1980年代から輸出にも力を注ぎ、アメリカを中心に香港やヨーロッパなど、生産量の4割近くが輸出されているという。

さらにこの酒蔵の特徴は杜氏による酒造りを辞めたこと。これはこの地方の酒造りを支えていた出雲杜氏の高齢化という理由もあるが、「伝統を継承しながらも、杜氏に頼らず社員だけで酒造りができるよう、データ化を進めて、後世に伝えていきたい」

というのが、5代目蔵元・田中裕一郎社長の想いである。

李白酒造・田中裕一郎社長が指さすのが、ホワイトボードに細かく書かれた酒造りの日々のデータ。この綿密なデータこそが、勘だけに頼らない酒造りを可能にする

そしてありがとうございます、『李白酒造』では無料試飲ができます! うかがった日に試飲できたのは4種。

「【冬季限定】李白 純米吟醸 しぼりたて」(720ml・1760円)、「李白 純米吟醸 WANDERING POET」(720ml・1760円)、「李白 純米大吟醸」(720ml・3300円)。そして『李白 純米本みりん」(720ml・990円)。

左から「【冬季限定】李白 純米吟醸 しぼりたて」「李白 純米吟醸 WANDERING POET」「李白 純米大吟醸』『李白 純米本みりん」「【冬季限定】李白 純米吟醸 しぼりたて」「李白 純米吟醸 WANDERING POET」「李白 純米大吟醸」。そして「李白 純米本みりん」

すでに飲んで感動していた純米よりもグレードが上の吟醸酒及び大吟醸酒ですからね。もう「旨い」だのなんだの書くのもヤボってもんですよ。

そして特筆すべきは「みりん」!

「みりん、飲むの?」

って思う人もいるかもしれませんが、ちゃんと造ったみりんって、料理に使えば料理が格段に旨くなるのはもちろん、お酒として飲んでもうまいんですよね。ハンフリー・ボガードが好きだったリキュールのドランブィの日本版みたいで、食後酒にピッタリだと思う

田中社長曰く、料理に使う時、普通はみりんって沸騰させてアルコールを飛ばすもんだけど、この「李白 純米本みりん」は、アルコールを飛ばさなくていいのも、また、「うまい!」とのこと。なんかわかるわ〜。

当然自分用にお酒を買いましたが、実はまだこの原稿には登場していないお酒を買った。

『李白酒造』では、一般的な清酒用の酵母以外に、花酵母という酵母を使った日本酒も造っている。これは田中社長が出身大学の東京農業大学醸造科でも研究していた酵母。それを使ったお酒って飲んでみたいでしょ。

それに『李白酒造』のお酒は、ホームページから購入することもできるんだけど、この花酵母を使ったお酒は、 限定流通商品でして会員にならないと購入できないの。こりゃあこの機会に買うしかないじゃん!

ってことで購入いたしました「李白 黒米仕込 華露〜CARO〜」(720ml・1571円)!

「李白 黒米仕込 華露〜CARO〜」。原料に黒米を使ったことでの、なんとピンク色のお酒! あんまりキレイなんで、飲む前に家でちゃんと撮影しました

この「黒米仕込 華露」。その色合いからして、勝手に軽やかで軽快な飲み口を想像していたんですが、フルーティな香りはその色合い通りなんだけど、いざ喉を通せばシッカリとしたド太い力強さがある。にもかかわらず、クイクイッとどんどん進んでしまうクセになる味

いや、この「黒米仕込 華露」に限らず、『李白酒造』のすべての酒がクセになりそうである。

ワイン、ビール、そして日本酒。島根県の酒の底知れぬ実力。それに感服しつつ、いやぁ〜また行きたい行きたい行きたい行きたいと駄々っ子のように「行きたい」を繰り返したい今の自分である。

もう一回言う。あ〜また行きたい島根県!

取材・撮影/カーツさとう

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