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手打ちそばとワインの店「naritaya」のことを知ったのは2022年6月半ば、北海道・余市&仁木エリアのワイナリーを取材して回っている最中のことだった。

余市&仁木エリアにワイナリーが集積

積丹(しゃこたん)半島の根っこ、余市川の河口近くの扇状地に広がる余市町と、その上流側に隣接する仁木町は、過去10年ほどの間に一気にワイナリーが集積し、「ドメーヌ・タカヒコ」のように国際的に名を馳せるスター的存在も出て、日本を代表するワイン産地の一つになりつつある隆盛の地だ。

仁木の町と頂白山(ちょうはくざん)を眺望する丘陵地にその店はあった。黒壁の建物に、白く簡素な暖簾が何かを宣言するようにクッキリと際立つ。中に入ってまず気づいたのは窓が大きいこと。横長の窓いっぱいに広がる風景こそは、成田和仁さん・真奈美さん夫妻がこの地を移住先に決めた最大の理由だった。「土地探しを始める前からよく収穫のボランティアにうかがっていた長野・東御のヴィラデストのカフェや、旅行で訪れたナパのジョセフ・フェルプスのテラスから見える、ブドウ畑の向こうに山々が見渡せる景色が素晴らしくて、それが目に焼き付いていました。自分たちが作る店も、来てくれた方の心に残るような景色を見ていただける場所にしたい、と考えていました。そんなこともあって、ブドウ畑の向こうに仁木の町並みと頂白山や余市岳が望めるこの場所に立った時、一目で『ここだ!』と感じたのだと思います」と真奈美さん。

窓からは仁木の町並みと頂白山、そして青い空が

その窓に面したカウンター席がこの店の特等席だ。奥にはテーブル席が数卓。さらにその奥にワインセラーが設けられている。ガラス越しに中を覗いてみると、日本ワインがずらり。中には余市&仁木産の、なかなか手に入らない珍品も混じる。

脱サラし、北海道へ移住

東京で長く暮らした成田夫妻。大手メーカー系商社に勤めていた和仁さんは趣味でそば打ちを学んでいた。広告代理店等で働いていた真奈美さんはワイン好きが高じてワインエキスパートやWSET(レベル3)などのワイン関連資格を取得していた。

成田夫妻

「東京・神保町に〈九段一茶庵〉というおそば屋さんがありました。場所柄、そこでは作家と編集者がそばを食べながら打ち合わせをするのがよく見られました。おそば屋さんでお酒を楽しみ、締めにそばを注文する彼らを見て、粋で、かっこいいと思ったんです」と真奈美さん(※九段一茶庵は2016年に閉店)。そんなこともあって成田夫婦は「ブドウ栽培をしながら、そば屋をやる」という夢を膨らませ始める。

夢実現の地は真奈美さんの出身地でもある北海道を選んだ。道内のいくつかの候補地を実際に訪ね、仁木町旭台に決めた理由はすでに述べた通りだ。和仁さんは早期退社した。真奈美さんは東京での仕事を移住先でも続けることにした(その部分は2022年5月に終えたとのこと)。2020年4月、夫妻は東京の住まいを引き払い、仁木に移った。念願のそば屋を開いたのは21年3月のことだ。

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そば屋の裏手には30アールの小さなブドウ...
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