町中華と対極にある上品で繊細な味
すごく考えられていると思ったが、町中華にはない上品さが気になった。例えば、炒飯には欠かせない紅ショウガが添えられていなかったり。コスト面もあるだろうが、少量でも炒飯の皿の縁に紅ショウガがあるとビジュアル的にも映えると思うのだが。
では、ラーメンからいただくことにしよう。まずはスープをひと口。おーっ、鶏ガラのみなのか豚骨を加えているのかわからないが、旨みというか滋味が染みわたる。とくにこの日は寒かったから旨さも倍増する。中太でやや縮れのある麺もスープによく合っていておいしかった。
ただひとつ気になったのは、具材。町中華のラーメンといえば、チャーシューとメンマ、モヤシ、ネギと相場が決まっている。しかし、「はまゆうラーメン」の麺の上にのるのは、青菜とモヤシ、ネギ、そして豚ミンチ。ラーメンというよりは、台湾の担仔麺に似ている。これがとてもオシャレに見えてしまうのは私だけだろうか。
一方、炒飯は見た目こそ町中華のそれと変わらないが、味がまったく違う。どこかで食べたことがあると思ったら、やはり母体である『浜木綿』の味なのだ。またはホテルの中華バイキングで出される炒飯っぽい。いずれにしても、町中華のワイルドな味とは対極にある上品で繊細な味。そりゃ間違いなく旨い。
ラーメンと炒飯を交互に食べても旨い。さらにその合間に酸味をきかせたもやしときゅうり、しめじのサラダをつまむと口の中がリセットされて、よりおいしく食べられる。いやー、本当に旨い。
でも、これが町中華の味なのかといえば、首を傾げたくなる。あっ、これはあくまでも個人的な見解だが、町中華の魅力は、マーケティングでは分析できない、いや、分析しようがない「大雑把さ」にあると思うのだ。『大阪王将』の街中華モデルが成功したのは、もともと大衆向けだったからだろう。
『浜木綿』は1967年に瑞穂区新瑞橋で町中華からスタートしたという。高級中華へ路線変更して、客を掴むまでは苦労の連続だったに違いない。しかし、ここで再び町中華に原点回帰するというのは、さらに料理のレベルを上げることよりも難しいのではないか。『中国食堂 はまゆう』が今後どのように進化していくのか見守っていきたい。
取材・撮影/永谷正樹