「麺」を究める東京・根津の厳選7店~蕎麦・うどん・ラーメン・パスタ~

谷中に比べると根津の飲食店はそこまで多くはない。しかし、麺類となると話は別。行列店もある蕎麦を筆頭に、うどん、ラーメン(中華)、パスタまで、ツルリとおいしい店が揃うのだ。昼は麺、夜はお酒を一杯なんて楽しみ方もできる秀逸な…

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谷中に比べると根津の飲食店はそこまで多くはない。しかし、麺類となると話は別。行列店もある蕎麦を筆頭に、うどん、ラーメン(中華)、パスタまで、ツルリとおいしい店が揃うのだ。昼は麺、夜はお酒を一杯なんて楽しみ方もできる秀逸な麺店を集めました!

『蕎麦 松風』

みずみずしい十割の蕎麦とダシ香るツユが支える根津らしい遊び心

「根津はいいお蕎麦屋さん多いですから。王道メニューだけでなく、楽しめるものも」と、店主の山田一良さん。「ただし、ちゃんとせいろもおいしいのが大前提」と言葉は続く。たとえば、この「ブラッドオレンジのひやかけ」。華やかな見た目で爽やかに甘くオレンジが香る。食欲をそそられて蕎麦を手繰れば、端正な細切りのそれはのど越しよく、口の中で香りと味がみずみずしく広がる。

ブラッドオレンジのひやかけそば 1380円

『蕎麦 松風』ブラッドオレンジのひやかけそば 1380円 よくある「スダチのひやかけ」とは一線を画し、甘みと柑橘の爽やかさが心に残る

特筆すべきはそれらをまとめるツユの旨さ。フルーティな甘さも取り込みながら、クリアなダシ感が心地よく返ってくる。緩みのない味わいのバランスが仕事のよさを物語っている。蕎麦は自家製粉の十割。常陸秋そばを中心にピンポイントで状態のいいものを、「味と香り」を重視して選んでいる。「コミュニケーションを大事にしている」というカウンター席。夜は気の利いたつまみが揃う蕎麦前から楽しみたい。

『蕎麦 松風』

[住所]東京都文京区根津2-37-12
[電話]03-6882-0842
[営業時間]11時半~14時LO、17時半~20時半LO
[休日]日・月
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩6分

『手打ち蕎麦 やなか』

石臼で丁寧に挽かれ、持ち味を最大限に引き出された蕎麦が旨い!

玄蕎麦は毎日店頭の石臼でゆっくり丁寧に挽き、何度もふるいにかける。全ては蕎麦に熱を与えず、納得のいく粉を得るためだ。朝イチに打って、数時間は寝かせておく。結果、打ち上がった蕎麦はふんわり甘く、穀物感もあってその持ち味が立っている。使うのは、十和田湖周辺の有機で契約栽培されたもの。毎日蕎麦と向き合って45年。自然と確立されたスタイルだという。

江戸前穴子の天せいろ 1800円

『手打ち蕎麦 やなか』江戸前穴子の天せいろ 1800円 独自配合のごま油でバリっと揚った江戸前の穴子天もいい

これをカドの取れた香り高くも丸みのあるツユでズズッと手繰るのがいい。外二で打たれ、のど越しも抜群だ。ツユと言えば、温かいかけ汁も独自。カエシを使わず薄口醤油ベースゆえ、きれいに取られたダシの旨みが優しく感じられ、蕎麦を引き立てている。「若い人に蕎麦の文化を伝えたい」という思いもあって、こちらでは本格的な『手打ち蕎麦体験』(要予約)も随時行っている。そちらも込みで、もおすすめだ。

『手打ち蕎麦 やなか』

[住所]東京都台東区谷中1-1-18
[電話]03-3828-5333
[営業時間]11時半~14時LO(14時半)、17時半~19時LO(20時)※売り切れあり、そば打ち体験による変更あり
[休日]木
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩6分

『蕎麦 三里』

軟骨入りのつくねから鴨の旨みが染み出した鴨せいろは必食

おすすめははっきりしている。ご主人の前田正明さんがかつておいしい蕎麦を求め食べ歩いていた勤め人時代、一方で惚れ込んだ鴨鍋があった。「この鴨鍋のおいしさを蕎麦にしたい」というのが独立前からの思いだったからだ。そのお店に鴨の仕入れ先も紹介してもらったというが、ポイントのひとつは軟骨の入った鴨のつくねだ。ここからツユに染み出したダシと噛み締めれば甘みのある切り身。

鴨せいろ 1850円

『蕎麦 三里』鴨せいろ 1850円 細かめにひかれた粉で打たれた9割の蕎麦は、自然な蕎麦の香りが返ってくる落ち着いた味わいだ

北海道産を使って打たれた自然体の蕎麦を、この2種類の鴨から旨みの出たツユに潜らせれば、蕎麦の香りと旨みとコクがひとつになってじんわりと押し寄せる。せいろとは少しだけ変えて、アゴダシも使うというツユの塩梅もよし。蕎麦は9割でのど越しと香りよく、ご主人同様、自然な佇まいなのがいい。散策途中に立ち寄るにも絶好の少し奥まった場所。腰を落ち着けてじっくり味わいたい。

『蕎麦 三里』

[住所]東京都文京区根津2-33-9
[電話]03-5814-1810
[営業時間]11時半~14時、17時~21時半LO(22時)
[休日]水
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩6分

『饂飩 根の津』

待望の名店復活!もっちりとした食感とイリコのダシに癒される

昨年11月に復活。2019年末以来、根津の名店としてその再開を待ちわびた人も多いのでは。もとより同店の讃岐うどんは人気だったわけだが、休業期間を経て、そのおいしさはさらなる進化を遂げている。国産100%の小麦粉を使い、茹で立て、締め立ては変わらないが茹で時間が約20分。以前より時間をかけて茹でられた麺は、コシと同時にそのもっちりした食感がなんともたまらない。

天ぷらうどん 1350円

『饂飩 根の津』天ぷらうどん 1350円 カツオやサバ節も合わせるがダシのベースはイリコ。丁寧に抽出され、クリアなツユがまた旨い

小麦の甘さもよりやさしく感じられる。そしてダシ。たとえば天ぷらうどん。透明感のあるクリアなツユはイリコの風味が鼻に抜けてじわりと染みる。中に泳ぐ麺を一緒にチュルチュルチュルと吸い込めば、ふ~っと脱力感さえ感じるはず。人気のたまご天やちくわ天など、存在感抜群の天ぷらと一緒に、しめ立ての麺をぶっかけでやるのもこれまたいい。麺線の美しさを愛でながら啜る喜びを味わいたい。

『饂飩 根の津』

[住所]東京都台東区谷中1-4-2
[電話]03-5834-8655
[営業時間]11時~14時、17時~21時(20時半LO)
[休日]不定休(インスタで確認可)
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩3分

『La Fame(ラ・ファーメ)』

素材と技術と哲学と。全てで仕上げる極上の根津イタリアン

パスタを出す店はいくつもあるが、シェフの哲学が根津という場所にマッチしているのは、ここが一番だと思うのだ。まずは素材。肉は米沢牛をメインにA4かA5ランクのみ。魚介も信頼のおける卸から。野菜にいたっては実家で有機栽培にこだわって育てたものを使用する。それらのポテンシャルをしっかり引き出すために塩分を控えて仕上げる。ゆえにパスタは時間が経っても味が尖ることなく、いつまでも美味。

黒毛和牛のボロネーゼ 1870円(昼・自家製パン、ドリンク付き)

『La Fame(ラ・ファーメ)』黒毛和牛のボロネーゼ 1870円(昼・自家製パン、ドリンク付き) 和牛の切り落としの旨みとトマトの酸味としっかり絡み合うリッチな味わい。自家製タリアテッレで

鴨はさらに丁寧な火入れもあってみずみずしさを保ち続けるのだ。ちょっと話し込んでも変わらない味わい。体にやさしい素材に低塩。年配の方も多い根津では、同店の料理は格別と言えるだろう。またランチなどにつくパンも天然酵母使用の自家製で、こちらも小麦の香り、甘みが引き出された逸品。となれば、根津でなくとも足繁く通いたいのは言うまでもない。

『La Fame(ラ・ファーメ)』

[住所]東京都台東区谷中1-2-10
[電話]03-5842-1180
[営業時間]12時〜14時半LO、18時〜21時半LO
[休日]月
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩3分

『BIKA』

目に飛び込んでくるニラの緑 鶏スープ、肉味噌、細麺が抜群のコンビネーション

ご主人の小池一郎さんは生まれも育ちも根津。「中国飯店」などの名店での修業を経て、こちらに店を構えたのが37年前。以来、こじんまりとしながらも上海料理の名店として愛され続けている。中でもファンが多いもののひとつが『ニラそば』だ。「修業先で中国人のまかないを見て面白いと思った」のがヒントのオリジナル。まずは美しい。一面を覆うニラの緑が目に飛び込んでくる。

ニラそば 1320円

『BIKA』ニラそば 1320円 コクがありつつも細麺がよく合うきれいな味だ

よく切れる中華包丁での手仕事だからこその細かさと、それゆえの食感のよさ。鶏だけで取られたすっきりコクのあるスープが張られ、真ん中には甜麺醤で炒められた肉味噌が。麺はかなりの細麺。ニラや肉味噌をレンゲですくいつつ、スープとともにこれをツツツーっとやったときの風味ときたら。さっぱりして、油濃くなくて、だけれどしっかり旨みを感じさせる料理はどれもおいしい。さて、何から行く?

『BIKA』

[住所]東京都台東区池之端4-25-11
[電話]03-3821-3347
[営業時間]11時半~14時(13時半LO)、17時半~20時(19時半LO)
[休日]火・第3日・月
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩3分

『ラーメン 喜粋』

鶏と煮干しのダブルスープ コクと旨みを感じさせつつキレのあるおいしさ

ど真ん中のストレートである。懐かしさを覚えるトラディショナルな構成。それでいて、一つひとつきっちり仕事がされた味わいは、力強く、完成度が高く、オリジナルだ。まずはその、煮干しと鶏のみを使ったダブルスープ。贅沢に使われた鶏ガラからのコクと旨みを煮干しが支え、実に味わい深い。で、これが醤油ワンタン麺であれば、醤油の旨みと風味もじわり。

醤油ワンタン麺 1100円

『ラーメン 喜粋』醤油ワンタン麺 1100円 ねぎ、細切りメンマ、チャーシュー、ナルト、味付け煮玉子…正統派の構成がまたうれしい

数種の醤油を合わせ、海産物も加えたカエシがキーポイントだ。人気のワンタンは、数種類の鶏肉の部位を使い、細かく刻んだゆずの風味が香る。少し縮れた細めの中華麺がよく絡んで箸がくいくい進むこと間違いなしだ。もう一杯、数量限定ながら鶏白湯も見逃しがたい。こちらは鶏のみを贅沢に炊き、白濁したミルキーなスープにはその旨みが濃厚かつきれいに満ちている。カイワレや晒しネギと一緒に爽やかに啜るのがいい。

『ラーメン 喜粋』

[住所]東京都文京区根津2-27-1 今井ビル1階
[電話]03-5834-2750
[営業時間]11時半~14時半、18時~21時(日・月は昼のみ)
[休日]無休
[交通]地下鉄千代田線根津駅1番出口から徒歩2分

撮影/橋本真美(松風、やなか、三里)、竹崎恵子(根の津、BIKA、喜粋)、小澤晶子(ラ・ファーメ)、取材/池田一郎(松風、やなか、三里、根の津、BIKA、喜粋)、編集部(ラ・ファーメ)

※2023年5月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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