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酒のプロフェッショナル「杜氏」は、一体、自身の醸した酒をどのように楽しんでいるのか?杜氏の晩酌にお邪魔する本連載。米国でのビジネスを捨て実家の家業である酒蔵に。昔ながらの味わいと、師匠に習った味わい。ふたつの美酒に合わせる肴は一体どんなもの?

静岡県『青島酒造』

【青島孝氏】

『青島酒造』の杜氏、青島孝氏

1964年、静岡県生まれ。大学卒業後、証券系投資顧問会社に勤務。渡米しファンドマネージャーとして活躍。1996年に帰国し、杜氏見習いとして青島酒造に入社。酒米作りも開始。2004年から杜氏を務める。

冷やが常温になるまでをゆっくりと

「5℃くらいに冷やしておいたものを常温になるまでゆっくりと、いろんな温度で酌む」と、杜氏は言った。「喜久醉(きくよい)」を醸す青島酒造の杜氏・青島孝さんだ。晩酌でよく飲むのは地域での伝統的な酒造りの流儀である志太流を守る特別純米と、師匠である河村傳兵衛氏の教えを結集させた純米吟醸だ。

「5℃くらいに冷やしておいたものを常温になるまでゆっくりと、いろんな温度で酌む」と、杜氏は言った。

「毎晩は飲りません。蔵では、もろみ、搾りの段階の異なるあらばしり、中取り、責めと全部を毎日利き酒しますから。夜は週1〜2日に抑えています。メリハリをつけたいし、老いるまで長く酒を楽しみたいです」と青島さんは笑う。安い酒ほど丁寧に造れ――。晩酌酒で楽しめるような手頃な酒ほど丁寧な仕事を施して、値段以上の価値あるものにする。そんな先代から伝わるポリシーを、常に肝に銘じているという青島さん。

“気付かれない酒”が理想形だと話す。「主役は料理。酒は主役を引き立てる名脇役なのが理想。食事後に、あぁ料理がおいしかった。そういや酒もよかったな。なんていう酒かな?くらいに食事中は存在感を消し、でも記憶に残る酒を丁寧に造りたいと思っています」

その晩、食卓には、マグロのたたきをのせた冷奴と、焼いた椎茸、生しらすが並んだ。この藤枝市は、海のものも山のものも、名産品は淡い風味のものが多いという。地酒も然り。喜久醉も香りと旨みは穏やかで、やさしい飲み口が特長だ。

醤油も塩も要らない。酒と一緒に素材の味を楽しむ。冷奴に魚のたたきを組み合わせるのがお好み。この日の魚はマグロの赤身。地元の肉厚な椎茸、玉取茸はシンプルにグリル。魚屋にいいものがあれば必ず買うという生しらすは、透明で尾先までピンッと立った新鮮な逸品。「地のものがやっぱり旨いですよ」

「いつも刺身や豆腐に醤油をかけませんし、椎茸も焼いただけ。素材の味がピュアに感じられて、これが好きなんですよ。今はマグロのたたきに刻み生姜を入れていますが、仕込みが始まったら味覚に影響する香辛料やコーヒーは厳禁。風味が強烈な牛肉は言わずもがな、赤身の肉はご法度です。それだけ鋭い感覚が必要な酒なんです」

造りが始まるまでは、基本的に何を食べてもOK。できるだけ太るために努力の毎日なのだとか。「醸造の数ヶ月間は、睡眠は1日に1時間半を2回ほど。力仕事も多くどんどん痩せて、約10kgも落ちてしまうので。造りが終わったら食べたいもの?牛肉ですよ。『さわやか』でげんこつハンバーグと炭焼きバーガー、ステーキを同時に。3人前をペロリとね」

『青島酒造』 @静岡県

酒造免許の記録が残る明治元年の1868年創業だが、江戸期から酒造りをしていたと伝わる。伝統的な志太流に加え、静岡酵母の生みの親であり酒造りの名手と謳われた研究技官・河村傳兵衛氏直伝の技を守った酒造りを続ける。志太流の喜久醉特別純米、傳兵衛流の同純米吟醸などが人気の定番

【喜久醉 特別純米】【喜久醉 純米吟醸】

『青島酒造』の「喜久醉 特別純米(左)」「喜久醉 純米吟醸(右)」
『青島酒造』

撮影/松村隆史、取材/渡辺高

『おとなの週末』2023年1月号

※2023年1月号発売時点の情報です。

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おとなの週末Web編集部
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