魚介の香りと肉の旨み、冷と温で感じる「夏チャーラー」の醍醐味
店内は全席カウンター席ゆえに調理している様子が見える。茹で上げた麺を氷水でキリッと締めて丼へ移して、その上からツユをかけていた。さらにネギや天かす、揚げなどをレンゲで豪快に盛り付けている。
冷やしたぬき中華が筆者の目の前に運ばれたのと同時に、店のご主人はチャーハンの調理開始。スタッフはもうひとりいたが、調理をするのがご主人ひとり。これでは料理の提供にタイムラグが出てしまうのではないかと心配したが、杞憂に終わった。なんと、チャーハンは2分かからないくらいで完成したのだ。
これが「冷やしたぬき中華」。具材は、天かすと揚げ、ネギ、そして中央に刻みチャーシュー。薬味はワサビ。麺が見えないほどたっぷりの具材に胸が高鳴る。こりゃ旨そうだ!
まぜそば的に丼の底の方に箸を入れて、麺と具材をかき混ぜる。見栄えは悪くなるが、これが旨いのだ。おっ、魚介の香りに鼻孔をくすぐられる。では、いただきます!
中華麺ゆえに蕎麦のような香りはないものの、噛んでいる歯を押し返す麺の弾力とサクサク食感の天かすが心地良い。特筆すべきは具材の刻みチャーシュー。決してたっぷりとはいえないが、魚介ベースのタレと混ざりあったときの存在感がハンパない。旨い!
こちらは「チャーハン」。水をひと口飲んで、まずは口の中をリセットした状態で味わう。おーっ! 肉の旨みが米の一粒ひと粒にしっかりと染み込んでいる。刻みチャーシューとネギ、卵と、具材はいたってシンプルなのに、なぜこんなにも複雑な味わいになるのだろう。
次に口の中にツユの味を残したまま食べてみる。うん、魚介の旨み成分であるイノシン酸と肉のグルタミン酸が混ざり合うわけで、こんなの旨いに決まっている。
チャーハンと冷たい麺の味のマッチングもさることながら、キリッと冷たい冷やしたぬき中華を食べた後に熱々のチャーハンを口の中に入れたときの温度差も心地良い。これが夏チャーラーの醍醐味かもしれない。
ってことで、これからも機会があれば夏チャーラーを紹介します。お楽しみに!
取材・撮影/永谷正樹