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2023年3月で90歳を迎えた写真家の細江英公(ほそえ・えいこう)さんは、戦後日本の写真界の中心的存在として国内だけでなく世界でも評価されてきました。生へのエネルギーを男女の性によって表現した『おとこと女』(1959〜60年)や、作家・三島由紀夫(1925~70年)をモデルに生と死の耽美的な世界を構築した『薔薇刑』(1961〜62年)など、30点をヴィンテージプリントで展示する貴重な写真展「フジフイルム スクエア 写真歴史博物館 企画写真展 生誕90年記念 細江英公 作品展『この写真家の熱量を観よ!』」が、東京・赤坂の東京ミッドタウンにある「フジフイルム スクエア」で開催されています。写真家とモデルの躍動感や熱量が、作品から感じられる内容です。

写真表現のひとつの究極の世界観

細江さんは17歳の時、東京都練馬区にあった米軍の兵舎「グランドハイツ」で撮った少女の写真『ポーディちゃん』で、富士写真フイルム(現・富士フイルム)主催の富士フォトコンテスト・学生の部で最高賞を受賞したことをきっかけにプロを目指し、70年以上写真界の第一線で活躍しています。

本展では、前述した『おとこと女』、『薔薇刑』のほか、舞踏家・土方巽(ひじかた・たつみ、1928~86年)との共同作業で生まれた『鎌鼬』(かまいたち/1965〜68年)、『抱擁』(1969〜70年)など、1950〜70年代の細江さんの代表的な4つのシリーズから精選された作品が並びます。特に、三島の鍛え上げられた肉体を被写体にした『薔薇刑』の「薔薇刑 #32」は、白と黒のモノクロのような暗闇の中に、三島の鋭くまっすぐな眼光が観るものを惹きつけてやみません。『薔薇刑』は、『おとこと女』を見て細江さんに興味を持った三島本人が、自身の評論集に使用する写真撮影の依頼をしたことがきっかけになったといわれています。

《おとこと女 #20》 1960年 (C)Eikoh Hosoe

どの作品も、細江さんにとって重要な制作のテーマである“人間の肉体”にアプローチした名作ばかりです。細江さんの写真表現への「飽くなき好奇心と探究心」と、「底知れない熱量」によって創造された作品の数々は国内外で評価されています。

欧米の写真文化をいち早く日本に紹介

細江さんは、「1960年代にアメリカで作品が評価されたことをきっかけに、欧米の写真文化をいち早く日本に紹介したことでも大きな功績を残しました」(展覧会資料より)。細江さんは、写真家が自分の写真だと署名をする「オリジナルプリント」の概念をいち早く導入し、日本での写真作品の評価のための礎を築きました。

本展では、細江さん自身の「ヴィンテージプリント」(撮影と同時期に制作されたオリジナルプリント)を通して、写真にかけてきた同氏の熱量を感じられるものとなっています。

《鎌鼬 #17》 1965年 (C)Eikoh Hosoe

【細江英公 】
1933年、山形県米沢市に生まれ、東京で育つ。1951年、富士フォトコンテスト・学生の部にて《ポーディちゃん》が最高賞を受賞。1954年、東京写真短期大学(現・東京工芸大学)写真技術科卒業後、フリーランスとなる。1959年、東松照明、奈良原一高、川田喜久治らとともに写真家によるセルフエージェンシー「VIVO」を結成。国内外で数多くの展覧会を開催する一方で、大学やワークショップでの写真教育を実践。また、パブリックコレクションを形成するなど、写真界の発展と後進の育成にも尽力した。2003年、英国王立写真協会より創立150周年記念特別勲章を受章。2010年、文化功労者として顕彰される。2017年、旭日重光章を受章。現在、東京工芸大学名誉教授。1995年より清里フォトアートミュージアムの初代館長を務める(展覧会資料より)。

【開催期間】2023年9月28日〜12月28日
【開催時間】10時〜19時(最終日は14時まで、入館は10分前まで)※会期中無休
【会場】FUJIFILM SQUARE(フジフイルム スクエア)写真歴史博物館
【観覧料】無料
【作品点数】30点 

トップ画像は《薔薇刑 #32》 1961年 (C)Eikoh Hosoe

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おとなの週末Web編集部
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