「1億人のいぶくろ」って?
自然豊かで海に囲まれ、標高差のある島原半島は水源も豊かで、その地形が胃に似ていることから「1億人のいぶくろ」というキャッチフレーズも。海産や畜産物はもちろん、野菜や果実にも恵まれ、その旬を味わえるスポットも次々とオープンしている。例えば地の食材をふんだんにつかったピザやスイーツが人気の「Galletto KAMEYA」。規格外で市場には出ない野菜や果実を生産者から譲り受け、メニューに生かしている。
2021年に北有馬町に開業した「花と喫茶 水と木」もユニークだ。棚田や地元の名所「面無橋」を見渡せる高台にある隠れ家のようなロケーション。1階がフラワーショップ、2階が喫茶店であり、屋外には風通しのいいテラス席もある。
立ち上げたのはNHK長崎放送局で活躍し、現在、南島原のひまわり局でパーソナリティとして情報発信している飛永瑞希さん。コロナ禍で地元の花が廃棄されることに胸を痛め、ならば自分が売ろうと花屋をオープン。フラワーアレンジメントやリースに仕上げて、地域で販売することにした。カフェは地域のコミュニティとなり、週末は県内外からも訪れ、ガレージまでスペースを拡張するほどに。フレッシュなハーブや旬のフルーツをつかったお茶やスイーツでリフレッシュできる。
語り継がれる悲しい歴史
渓流や海、水源など、水の清らかさに心打たれる南島原市には、天草四郎をはじめ、潜伏した多くのキリシタンが命を落とした「原城」、1991年の普賢岳噴火による土石流の被害を保存する施設など、悲しい歴史の地も多い。原城ではボランティアガイドが歴史に残らぬ物語を語り継ぎ、最新技術のVRが城のあった当時のヴィジュアルを再現している。
また「土石流被災家屋保存公園」や「大野木場砂防みらい館」では、災害当時そのままの住居や小学校の校舎が保存され、噴火による猛威に圧倒される。こんなピースフルな地にこのような悲劇があったなんて、と、感じる人は少なくないだろう。
「大野木場砂防みらい館」は火山砂防を学ぶ場でもあり、災害の監視所、砂防堰堤などの土砂を緊急に除去する必要がある場合の無人施工機械を操作、いざというときの避難場所としても機能する。
「土石流被災家屋保存公園」の横には「道の駅ひまわり」も2023年、リニューアル。つらい過去から学びつつ、未来を見据え、どんどんアップデートしていく。これぞ南島原市での「心浄化旅」の効用! 重くなったわだかまりを水に流し、新しい一歩を踏み出そう。
「南島原ひまわり観光協会」https://himawari-kankou.jp/
文・写真/間庭典子